<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ソローモデルについて

ソローモデルについて。本ページでは数式を載せていないので、厳密な数式展開については各種テキストを参照されたい。

 

ソローモデルは経済成長を分析するツールとして用いられる。そのための準備として、資本ストックの変化と、労働・資本を生産要素とする生産関数を考える。

 

  • ある期(t期)から次の期(t+1期)にかけての資本ストックの変化は何によって決まるかというと、t期に行われた投資と資本減耗である。
  • 投資は、資金市場の均衡より、家計貯蓄額と等しくなる(海外部門や政府部門は捨象している)。家計貯蓄とは、総所得(GDP)のうち消費されない割合である。つまり、資本ストック遷移式は、t期のGDP×貯蓄率t期の資本ストック×資本減耗率、で表すことができる。
  • 資本ストックの遷移式を労働(人口)で割ると、一人当たり資本ストックの遷移式に書き換えることができる。
  • 生産量は、労働(人口)と資本を生産要素とする。規模に関して収穫一定なコブダグラス型生産関数を仮定し、労働人口で両辺を割ると、一人当たりの生産量(一人当たりGDP)を一人当たり資本ストックで表すことができる。
  • 一人あたり資本ストックの遷移式に、一人当たりGDPの式を代入して整理すると、一人当たり資本ストックの変化は、①貯蓄率×一人当たり生産関数と、②(人口成長率+資本減耗率)×t期の一人当たり資本ストックの大小関係によって、正負の値が決定される。①>②であれば、一人当たり資本蓄積は増加する。①<②であれば減少する。(※人口成長率は一定と仮定している)
  • ①=②となるとき、定常状態と呼ばれ、一人当たり資本ストックは変化しない。貯蓄率が上昇すると、定常状態の一人当たり資本ストックは増加する、反対に人口成長率が上昇すると、それは減少する。
  • 定常状態では一人当たり資本ストックに変化が起きないので、一人当たり資本ストックの成長率は0である。一人当たりGDPは一人当たり資本ストックに依存していたので、同様にこのときの成長率は0になる。一人当たりではなく、GDPの定常状態における成長率はというと、人口成長率に等しくなる
  • このモデルに技術水準(外生変数)を加え、労働投入量に掛け合わせる形でモデルを書き換えると、技術進歩を考慮したモデルとなる。定常状態では、一人当たりGDPの成長率は技術進歩率に等しくなる

 

このように、ソローモデルは、一人当たりGDPの成長率を、資本蓄積の推移をベースに説明したものとなる。このモデルに基づけば、日本で高度成長期に急ピッチで欧米に一人当たりGDPがキャッチアップし、その後は成長率が落ち着いたことを説明できることになる。定常状態は上述のように、(このモデルでは外生変数である)貯蓄率や人口成長率によってその水準が変化する。定常状態での一人当たり資本ストックの値は、国の社会経済要因によって異なりうることが分かる。定常状態における一人当たり資本ストックが高ければ、当然ながら定常状態の一人当たりGDPも高くなる。

 

(参考):

二神孝一・堀敬一(2017)『マクロ経済学 第2版』有斐閣