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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

割引債における2つの利回りについて

本ページでは、割引債において用いられる2種類の利回りについてまとめたい。

割引債とは、クーポン(利息)がなく、額面価格より低い価格で発行される債券である。投資家は、割引かれた価格(購入価格)で債券を購入し、満期で額面が返ってくるため、リターンを得ることができる。(以下の説明では、購入価格と額面の違いを明確に意識しておく必要がある。)

国庫短期証券Treasury Discount Bills、T-Bill)という短期国債が割引債の代表例である。

 

Discount Yield

Discount Yieldは、額面金額からどれだけ購入価格が割り引かれるかを示している。

Discount Yieldをy_dとすると、購入金額は以下のように表せる。

利回りは年率であり、式中のn/360はそれを保有期間で換算することを意味している(nが日数で、一年を360日として計算している)。n/360をいったん無視してみると、額面金額から一定割合割り引いた値が購入金額である、ということを言っているに過ぎないので、特別難しいことはない。

 

しかし、このDiscount Yieldは額面金額がベースになっている利回りである点に注意が必要だ(額面金額に利率をかけることで割引額が計算されるため)。通常、投資リターンを表現する際には購入金額をベースにした利回りが用いられる。例えば、100万円で株式を購入して株価が110万円になった場合、10%のリターンが出た、といえるが、これは何を意味しているかというと、購入金額である100万円の10%にあたる10万円が儲かった、ということである。

 

したがって、このDiscount Yieldだけでは、他の金融商品と比べてどれだけの利回りを期待できるか、という比較が困難となる。そこで用いられるのが以下のMoney market Yieldである。

 

Money market Yield

こちらは額面金額ではなく、購入金額をベースにした利回りとなっている。Money market Yieldをy_mとすると、以下のように表せる。

それでは、Discount Yieldしか与えられていないときに、このMoney market Yieldを算出するにはどうしたらよいだろうか。Discount Yieldに関する式を少し変形すると、以下のようになる。

そうすると、Money market Yieldに関する式と合わせて、

という関係が成り立つことが分かる。あとはこれをy_mについて解くと、

になる。y_dが十分に小さければ、y_mとの差はそれほど大きくならない。