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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

対数を含む回帰式における係数の解釈について

本ページでは、対数を含む回帰式における係数の解釈についてまとめたい。

 

以下、3つの種類の回帰式において、それぞれの係数の読み取り方について説明する。lnは自然対数を示す。

 

①Y=a+bX+u

こちらは、対数を含まない標準的な回帰式である。この式において、「Xが1増えた場合、Yはb増える」と考えることができる。

 

②ln(Y)=a+bln(X)+u

説明変数、被説明変数の両方が対数変換された回帰式である。ここでは、「Xが1%増えた場合、Yがb%増える」と解釈することができる。

 

③ln(Y)=a+bX+u

被説明変数にのみ対数がかかったバージョンである。このとき、「Xが1増えた場合、Yがb×100%増える」と解釈することができる。

 

④Y = a+bln(X)+u

説明変数のみ対数変換を行った場合の回帰式である。このとき、「Xが1%増えた場合、Yがb/100増える」と解釈することができる。

 

増加率と対数差分の近似について

上記のような対数を含む回帰式における係数の解釈にあたっては、以下の近似関係を応用する。この近似は、経済・統計分析において頻出する考え方となる。

 

lnX1 - lnX0 ≈ (X1-X0)/X0

 

この関係は、一言でいえば対数差分が増加率と近似的に等しくなる、ということを示している。

 

上記③の回帰式を例にとってみると、時点が0から1に変化したとするとき、

lnY1 - lnY0 = b(X1-X0) + u1 - u0 ≈ (Y1-Y0)/Y0

となり、左辺の被説明変数は増加率(変化率)となる。パーセント表示にするためには両辺を100倍する必要があり、よってXが1増えるとYはb×100%増えると解釈することができる。

 

次にこの関係式の導出をしてみたい。

まず準備として、f(x)=ln(1+x)の微分を行うと、

f'(x)=1/(1+x)

となる。f(x)=ln(1+x)のグラフの接線を考えた時、原点(x=0)においては、上記の微分計算により接線の傾きは1であることが分かる。よって、接線の方程式はy=xとなる。

 

そのため、原点のまわりでは(xが0に限りなく近いときは)、ln(1+x)はxに近似するということができる。

 

このln(1+x)≈xという関係を用いて、最初の増加率と対数差分の近似関係の導出が可能となる。

lnX1 - lnX0 = ln(X1/X0) = ln(1+ X1/X0 -1) = ln(1+ (X1-X0)/X0) ≈ (X1-X0)/X0

 

 (出典):

田中隆一(2015)「計量経済学の第一歩 実証分析のススメ」有斐閣ストゥディア

松浦寿幸(2021)「第3版 Stataによるデータ分析入門」東京図書

尾山大輔、安田洋佑(2013)「[改訂版]経済学で出る数学高校数学からきちんと攻める」日本評論社