本ページでは、増加率と対数差分の近似についてまとめたい。以下の近似関係は、経済・統計分析において頻出する考え方となる。以下、lnは自然対数を示す。
lnX1 - lnX0 ≈ (X1-X0)/X0
この関係は、一言でいえば対数差分が増加率と近似的に等しくなる、ということを示している。
lnY =a+ bX + uという回帰式を例にとってみると、時点が0から1に変化したとするとき、
lnY1 - lnY0 = b(X1-X0) + u1 - u0 ≈ (Y1-Y0)/Y0
となり、左辺の被説明変数は増加率(変化率)となる。パーセント表示にするためには両辺を100倍する必要があり、よってXが1増えるとYはb×100%増えると解釈することができる。
次にこの関係式の導出をしてみたい。
まず準備として、f(x)=ln(1+x)の微分を行うと、
f'(x)=1/(1+x)
となる。f(x)=ln(1+x)のグラフの接線を考えた時、原点(x=0)においては、上記の微分計算により接線の傾きは1であることが分かる。よって、接線の方程式はy=xとなる。
そのため、原点のまわりでは(xが0に限りなく近いときは)、ln(1+x)はxに近似するということができる。
このln(1+x)≈xという関係を用いて、最初の増加率と対数差分の近似関係の導出が可能となる。
lnX1 - lnX0 = ln(X1/X0) = ln(1+ X1/X0 -1) = ln(1+ (X1-X0)/X0) ≈ (X1-X0)/X0
(出典):
尾山大輔、安田洋佑(2013)「[改訂版]経済学で出る数学高校数学からきちんと攻める」日本評論社