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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

初期投資を必要としない土地活用方法について



保有している土地にアパート等を建てて家賃収入を得るという、ポピュラーな不動産活用方法がある。しかし、建設にあたり莫大な費用がかかり、回収までには相応の時間を要する。

 

多額の初期投資を必要としない土地活用の方法について考えてみたい。

 

借地権の活用

土地に関する権利として、所有権、借地権という二つの権利が存在する。

 

土地の所有権はその名の通り土地を所有する権利、借地権は土地を借りる権利である。

 

ある土地で家を建てて住むことを検討する場合、所有権付きなのか借地権付きなのかを確認する必要がある。

 

所有権の場合、固定資産税等の税金がかかるが、その土地を自由に使うことができ、また、売却も自由に行うことができる。

 

一方で、借地権の場合、定期的に地代と呼ばれる土地の賃料を地主に毎月支払う必要があるほか、建物の建設にも地主の許可が必要となるが、物件を安く(最大半額程度)購入することができることに加え、固定資産税等の税金は発生しない。

 

土地の運用者から見た借地権のメリット

以上、購入者の視点から所有権と借地権の違いについてまとめたが、土地を運用する立場に立ったときに、その土地を「貸す」(つまり借地権を販売する)ことのメリットは何かについて考えてみたい。

 

運用者が借地権を通じて得られるのは、購入者が最初に支払う一次金と、定期的に支払う地代である。自らの資金で建物を建設するなどして賃貸に出す場合、初期投資が大きくかかることに加え、借り手が見つからないリスクがあるが、借地権の場合はこのような大きなリスクを抑えた形での運用が可能となる。その代わり、毎月の地代による収入は、比較的少なくなる傾向にある。

 

等価交換方式

初期投資を抑える土地活用方法として、借地権での運用に加え、等価交換方式というものがある。土地の所有者が土地の一部を、建設会社が建物の一部を差し出すことで、土地の所有者は、(土地の一部を失う代わりに)建物を保有できたことになる。(詳しくは以下の参考リンク参照)

 

(参考):

【ホームズ】いつかは土地を返却?借地権付き建物のメリットとデメリットについて | 住まいのお役立ち情報

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なぜ限界代替率は限界効用の比と等しくなるのか

2つの財(財A、財B)の選択を考えるとき、限界代替率は限界効用の比と等しくなる。

限界代替率とは、「財Aを1単位増やした時、同じ効用水準を維持するために、財Bを何単位あきらめなければならないか」を示している。消費量をXとすると、△X_B/△X_A

の絶対値として表せる。

 

一般的なケースにおいては、財Aの消費量が少ないうちは、追加的に1単位財Aを消費したときの限界効用(平たく言えば追加的なありがたみの大きさ)のは大きいので、効用を維持するためには財Bをかなりの量あきらめる必要があるが、財Aを比較的たくさん消費している段階でさらに追加的に1単位財Aを消費したとき、追加的なありがたみは小さくなるので、効用を維持するにしても財Bをそれほどあきらめなくてよい、ということになる。これは、無差別曲線が原点に向かって凸である(凸性)理由である。

 

限界効用は、上述のとおり、平たく言えば追加的なありがたみの大きさを示していると言ってよいだろう。この限界効用の増加は、消費量をおおきくするにつれて次第に減少していく(限界効用逓減の法則)。身近な例でいえば、ビールの1杯目はとてもおいしく感じるが、2杯目3杯目、、と飲み進めていくうちに次第に飽きてきてしまう。

 

2つの財の消費からなる効用を考えた時、限界的な効用の変化は、以下の数式で表される。

それぞれの財(A,B)が1単位上昇したときの効用の変化に消費量の変化をかけあわせたものが、トータルの限界効用となる。無差別曲線(線形ではない)であったとしても、微小な財の変化であれば上記のように限界効用を線形の式に近似することができる。

 

ここで、財Aの消費量の上昇と財Bの消費量の減少を同時に行い、両者の効果を相殺して、限界効用を0にする場合を考える。このとき、左辺のduは0になるので、これを式変形すると、

となる。

上記の式が成り立つのは、「限界効用を0としたとき」すなわち効用の水準を一定に保った場合である。効用を一定に保つような財Aと財Bの比率(左辺)は、限界代替率に他ならない。

 

右辺は限界効用の比になっていることが分かる。

右辺にマイナスがついているが、左辺の限界代替率は通常マイナスなので、左辺の絶対値は限界効用の比に等しいと解釈することができる。

 

以上より、限界代替率は限界効用の比と等しくなる。

 

(参考)

神取道宏(2014)「ミクロ経済学の力」日本評論社

実質実効為替レートの計算方法について

本ページでは、実質実効為替レートとは何かについてまとめたい。実質実効為替レートとは、一言でいえば、取引(貿易)を行っている複数の通貨と比べた、自国通貨の「実力」を示したものと言える。

 

実質実効為替レートの理解には、いくつか段階を踏む必要がある。そこで、実質為替レート→実効為替レート→実質実効為替レートの順に説明していく。

 

実質為替レート

A国とB国の為替レートについて、両国の物価水準を考慮したものを実質為替レートという。実質為替レートは、外国の財を1単位購入するのに自国材を何単位あきらめなければならないかを示している。

 

A国とB国の実質為替レートは以下の式で表される。

Sは名目為替レート(一般的に為替レートとして表示されるもの)、PaはA国の物価指数(A国通貨建て)、PbはB国の物価指数(B国通貨建て)である。

 

実効為替レート

実際には、2国間のみでなく、様々な国と貿易を行なっている。ドルに対しては価値が上がってもユーロに対しては下がる場合があるかもしれない。このように、取引を行う複数の通貨について、取引量でウェイト付けして各通貨とのレートを加重平均したものを実効為替レートという。実効為替レートは、取引(貿易)を行っている複数の通貨と比べた、自国通貨の「実力」を示したものと言える。

 

実効為替レートは以下の通り表される。

ここで、i=1,…N種類の外国通貨と取引を行なっており、ωitはt時点における通貨iでの貿易量の全体(自国の総貿易量)に占める比率である。()内の分数は、ある通貨iとの名目為替レートについて、1期からt期のレートの変化率を示す。

 

また、Πは総乗記号という。

以下に数値例を示す。1期の実効為替レートを1とし、


とすると、t期の実効為替レートは、
  

となる。

実質実効為替レート

上記で示した実効為替レートは、名目レートをベースにしたものであった。これを冒頭に紹介した実質為替レートに置き換えれば、実質実効為替レートを求めることができる。物価水準を考慮したその国の通貨の実力を示したものといえる。

 

 

(参考):

高木信二(2011)「[第4版]入門国際金融」日本評論社

フラット35のスキームとは?ーMBSの活用ー

本ページでは、フラット35のスキームについてまとめたい。ここでは、保証型ではなく、買取型のスキームを取り上げている。

 

フラット35は、住宅ローンの借り入れの際に長期の固定金利で契約が可能となる仕組みであり、住宅金融支援機構が提供している(ただし、ローンの契約者はあくまで民間の金融機関と契約を結んでいる)。

 

フラット35のスキーム図は住宅金融支援機構の公式ページに掲載されているので、こちらを参照されたい。

フラット35のしくみを教えてください。 - フラット35

 

住宅金融支援機構は直接ローンの借り手と契約を結ぶわけではない。顧客はフラット35のもと、まずは民間の金融機関(銀行)と長期・固定金利のローンを契約する。次に銀行は、そのローンを住宅金融支援機構に売却する。これで、ローンが住宅金融支援機構に移動され、リスクが移転されたことになる。

 

その後住宅金融支援機構が行うのは、このローンを証券化し、投資家に売却することである。証券化とは、一言でいえば、ある資産にたくさんの投資家が小口で投資できる仕組みである。証券化については、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

ここでは、証券化商品の中でも、MBS(Mortgage Backed Security)に分類され、ローンを担保とした証券化商品である。MBSについては以下も参照。

hongoh.hatenablog.com

 

投資家がMBSを購入する理由は、当然その投資によって金銭的リターンを上げるためである。この金銭的リターン(具体的には元利金)を誰が投資家に支払うのかといえば、直接的には住宅金融支援機構になるのだが、その支払い原資は、最終的にはローンを契約した顧客になる。顧客によるローンの返済が、銀行を通じて住宅金融支援機構に受け渡され、この資金をもとに投資家に元利金が支払われることになる。

 

日銀当座預金とコールレートについて

 

本ページでは、日銀当座預金コールレートについてまとめたい。

 

日銀当座預金とは、民間の金融機関(銀行)が日銀に預けている預金である。

 

甲さんが乙さんから物を買い、その代金を銀行振り込みで行ったとする。甲さんの取引銀行をA銀行、乙さんの取引銀行をB銀行とすると、AさんがBさんに代金を支払う際、実際にはA銀行の日銀当座預金から、B銀行の日銀当座預金に資金が移動されるという形になる。つまり日銀当座預金上での資金移動ということになる。

 

このようにして、日々の決済が行われているが、状況によっては、民間の銀行が抱える日銀当座預金の額が十分でなく、決済を円滑に履行できないことも考えられる。そうしたとき、一時的にその銀行は、別の銀行から資金を融通してもらうことがある。こうした、日々の資金繰りのための銀行間で行われる資金融通の市場をコールレートといい、そこでの金利コールレートという。

 

金融政策における政策金利

日銀の金融政策は、国債の売却・購入を通じて、金利を上下することによって金融引き締めあるいは金融緩和を行っているが、そのターゲットとなる金利コールレート(具体的には無担保コールレートオーバーナイト物)である。なぜ日銀がこのコールレートを動かせるかというと、上記の通り、コールレートは日銀当座預金と密接に関連しているためである。国債の購入により、民間金融機関の日銀当座預金の量が増えると、その余剰分は当然増えることになる。そうすると、銀行間コール取引におけるコールレートは下落する。反対に国債を金融機関に売却し、日銀当座預金の供給量を減らせば、日銀当座預金が相対的に足りなくなるため、コールレートが上昇する。

 

このようにして、日銀は政策金利を上下させることを通じ、金融政策を行っている。

短期金利と長期金利の関係について―金利の期間構造とは―

本ページでは、短期金利長期金利の関係についてまとめたい。

 

現時点の1年物の債券の金利をr1、現時点の2年物の債券の金利をr2、1年後における1年物の債券の金利の予想値)をrf1とすると、以下の関係が成立すると考えられている。


もし、1年物の金利を2回連続して保有する場合(左辺)の運用結果が、2年物の債券を持つ場合(右辺)と等しくない場合、ここに裁定機会が生まれてしまうため、結果的に両辺は等しくならなければならない。逆に言うと、1年後の1年物の金利の予想値rf1は、両辺が等しくなるような水準に定まるということである。

 

同時に、債券の年限を増やした場合でも同様な関係が成り立つため、短期金利長期金利の関係を説明できたことになる。こうした短期金利長期金利の関係を金利の期間構造という。上記の式からわかる通り、異なる期間の金利を結びつけるのは将来金利の期待値である。この期待値が高まれば(将来金利が上昇することが予想されれば)、長期金利は上昇する。金融政策はこの期待金利に働きかけており、短期の実際の金利を下げることで期待金利も下げるように誘導することを通じて長期金利を下げている。

 

なぜ長期金利の方が高くなるのか

長期金利は一般的に短期金利よりも高くなる。その理由の1つは、長期の債券に流動性プレミアムがあるためと考えられる。長期の国債は、短期の(頻繁に売買されている)債券と比べて流動性が低い。よって、仮に満期になる前に長期債を売却しようとしても、売り手が見つからず低い価格でしか売れない可能性がある。この流動性リスクに対する対価として、長期金利に対してプレミアムが乗っているという仮説が流動性プレミアム仮説である。流動性プレミアムを考慮すると、上記の式は以下のように書き換えることができる。


ここで、ωは流動性プレミアムである。

 

IS-LM分析について

本ページではIS-LM分析の基本的な考え方についてまとめたい。

短期と長期

マクロ経済分析にあたっては、短期と長期を区別する必要がある。短期においては市場メカニズムが働かない場合がある状況、具体的には価格が硬直的である状況を想定している。さらに、経済主体は短期的には将来の期待を織り込んだ行動を行わない。

短期市場を前提にIS-LM分析のフレームワークに関する説明を行う。

 

IS曲線

財市場を均衡させる実質利子率とGDPの組み合わせをIS曲線という。

財市場の均衡条件は

Y = A+c(Y-T)+I(r)+G

Aは基礎的消費、cは限界消費性向である。このモデルでは、今期の可処分所得(Y-T)にのみ消費が依存していることを意味している。また、投資Iは利子率rの減少関数である。

この式を整理すると、

Y = (A-cT+I(r)+G)/(1-c)

となる。rでこの式を微分すると、Yはrの減少関数になっていることが分かる。よって、IS曲線は右下がりとなる。

 

LM曲線

貨幣市場の均衡条件は

M/P = L(Y,r)

である。価格Pが一定であることを仮定すると、インフレ率が0であり、したがって名目利子率と実質利子率は一致する。本来は貨幣需要関数は名目利子率の減少関数であるが、ここでは実質利子率rとしている。

名目貨幣量Mも一定とすると、Yが増加した時、左辺が一定となるにはrも増加していなければならない。そのため、LM曲線は右上がりとなる。

 

以上より、財市場と貨幣市場を同時に均衡するときの実質利子率とGDPは、右下がりのIS曲線と右上がりのLM曲線の交点で表される。

ここでは、rとY以外の変数(例えば政府支出Gや名目貨幣量M)は外生変数となる。外生変数を動かすと、IS曲線またはLM曲線はシフトし、新たな均衡点が生まれる。このようにして、各種政策効果(財政政策、金融政策など)が利子率とGDPに与える影響について分析を行うことができる。

 

(参考):

二神孝一・堀敬一(2017)『マクロ経済学 第2版』有斐閣