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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ドーマー条件について平たく説明

本ページでは、ドーマー条件とは何かについてまとめたい。ドーマー条件とは一言でいえば、財政の安定化を示した条件である。

 

t期末の債務残高Dは、t期末のプライマリーバランス(債務の返済を除いた財政収支)PBと、前期までの債務残高、利払費(利子率r)の合計であるから、

となる。両辺をGDP(Y)で割ると、

となる。そして、GDPが前年からgの割合で成長するとすると、

となる。左辺は債務対GDP比である。この左辺の値を増加させず、一定に保つまたは減少させるためにはどのような条件が必要となるのだろうか。

 

PBが0であり、r=gであれば、

となり、前期の債務対GDP比と今期の債務対GDP比は等しくなる。さらに、仮にg>rであれば、左辺<右辺となり、債務対GDP比は減少する。反対に、PB=0であっても、g<rであれば、左辺>右辺となり、債務対GDP比は増加する。

 

よって、まずプライマリーバランスを黒字化させること、そして利子率以上の経済成長を実現することが、債務対GDP比の拡大を防ぐ条件となる。


このドーマー条件は、政府の予算制約式のみから導出されており、需要の変動による利子率の変化について考慮されていない点に注意が必要である。

 

また、債務対GDP比がいくら以上だと破綻する、といった閾値があるわけではなく、あくまでこの値が上昇していくと、政府が国債を償還できずにデフォルトして「財政破綻」が起きる可能性が高まる、と言うことである。

 

(参考):

吉野直行、宮本弘曉(2021)『財政赤字の安定化条件「ドーマー条件」の再考察』財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」令和3年第2号

吉田博光(2015)『我が国財政の健全化に立ちはだかる壁ー財政の長期安定化には基礎的財政収支の黒字化だけでは不十分―』参議院 立法と調査No.365