国際収支統計と資本流出・資本流入の考え方
本ページでは、国際収支(Balance of Payments)の統計について概要をまとめたい。
経常収支
経常収支(Current account)=貿易収支(Goods)+サービス収支(Service)+第一次所得収支(Primary income)+第二次所得収支(Secondary income)
となる。それぞれの定義は以下の通りである。
貿易・サービス収支
貿易収支及びサービス収支の合計。実体取引に伴う収支状況を示す。
貿易収支
財貨(物)の輸出入の収支を示す。
国内居住者と外国人(非居住者)との間のモノ(財貨)の取引(輸出入)を計上する。
サービス収支 サービス取引の収支を示す。
第一次所得収支
対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。
第二次所得収支
居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。
官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。
財務省HPより抜粋
経常収支は対外純資産の変化に対応している。経常収支が黒字であればその分対外純資産は増加する。
資本移転等収支
資本移転収支(Capital account)は、対価の受領を伴わない固定資産の提供、債務免除のほか、非生産・非金融資産の取得処分等の収支を意味する。
金融収支
金融収支(Financial account)=直接投資(Direct investment)+証券投資(Portfolio investment)+金融派生商品(Financial derivatives)+その他投資(Other investment)+外貨準備(Reserve assets)
である。
金融収支は、金融資産に関する居住者と非居住者間の債権・債務の移動を伴う取引の収支を意味する。
資本流出と資本流入
以上の収支を、資本流出と資本流入という視点から考えてみる。まず、資本流出と資本流入の定義は以下の通りとなる。
資本流出とは日本の経済主体が外国資産を購入すること(外国に対する貸出)である。
資本流入とは外国の経済主体が日本の資産を購入すること(外国からの借入)である。
資産を購入する時、対価として資本を支払う。あくまで「資本」(資産ではない)が外国側に渡ったら資本流出であり、国内に入ってきたら資本流入である。資本と資産は反対方向に動く。
金融収支
金融収支は、外国との資金の貸借関係を示したものであった。よって、金融収支を資本流出と資本流入を用いて表すと以下のようになる。
(※以前用いられていた「資本収支」は、「資本流入−資本流出」と定義されており、金融収支と符号が反対になるので注意。)
資本流出−資本流入がプラスであれば、対外資産が増加したことを示している。よって、
対外純資産の増加=資本流出−資本流入=金融収支−資本移転収支(①)
が成立する。
経常収支
例えばある日本企業が外国に財を輸出した場合、外国通貨建で代金を受け取ると、それを外国資産の購入等により運用する必要が出てくる。かりに企業が円に交換した場合でも、交換に応じた別の主体は結局外国通貨を保有していることになる。つまり、経済全体で見ると、一回の財の輸出によって、資本が海外に流出したことが分かる。
反対に、ある日本企業が外国企業から財を輸入した場合、外国企業は円資産を保有することになる(やはりここでも、仮にその企業が外国通貨に円を交換したとしても、交換に応じた別の主体が円資産を保有することになる)。よって、経済全体で見ると、一回の財の輸入によって、資本が流入したことが分かる。
以上より、経常収支の項目について、以下の式が成り立つ。
(輸出代金の受取り+所得の受取り)−(輸入代金の支払い+所得の支払い)=資本流出−資本流入(②)
左辺は経常収支に他ならず、右辺は対外純資産の増加なので、結局、経常黒字は対外純資産の増加に等しいことが分かる。
各収支の関係
以上より、経常収支、金融収支、資本移転等収支の関係が分かる。
①より、対外純資産の増加は金融収支と資本移転等収支の差に等しい。
②より、対外純資産の増加は経常収支に等しい。
よって、
経常収支=金融収支−資本移転収支
が成り立つ。
(出典):