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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

為替レートの決定理論(カバー付き金利平価、カバーなし金利平価など)

本ページでは、カバー付き金利平価、カバーなし金利平価、実質為替レートといった概念についてまとめたい。

 

以下では、ドル・ユーロ間の為替レートを例にとって考えてみる。為替レートを以下のように表現するとき、1ユーロ1.2ドルであることを意味する。この値が高い方がユーロ安、低ければユーロ高である。

カバー付き金利平価

先渡為替相場をFで表すと、無裁定条件は

となる。これをカバー付き金利平価という。左辺はドルのみで運用した場合、右辺はユーロで運用してからドルに戻す場合である。無裁定条件の下ではどちらの方法で運用しても収益率は変わらない。このことから、米・欧の金利の違いによって為替レートが決定されることが分かる。

 

カバーなし金利平価

先渡為替相場ではなく、現在における将来の直物相場の予想値を用いた金利平価はカバーなし金利平価と呼ばれ、以下の式で表される。

もしカバー付き金利平価とカバーなし金利平価が同時に成立するとき、

が成り立つ。つまり、先渡為替相場と現在における将来の直物相場の予想値は等しくなる。

また、金利平価式は以下のように近似できる。

Δは名目為替レートの変化分である。したがって、右辺の第2項は名目為替レートの変化率を示す。

実質為替レート

実質為替レートqは、

と表せる。実質為替レートが1であれば、名目為替レートは米欧の価格比と等しいことを意味する(購買力平価)。もし実質為替レートが1以下であれば、ドルはユーロに比べて相対的に強いということができる。反対に1以上であれば、ユーロが相対的に強い。

 

フィッシャー効果

また、購買力平価が成立するとき、為替レートの変化率はインフレ率の差に等しくなる。そうすると、金利平価式より、2国間の名目利子率の差は、期待インフレ率の差に等しくなる。これをフィッシャー効果という。フィッシャー効果が成立するとき、それぞれの名目利子率から期待インフレ率を引いた値(これを実質利子率と呼ぶ)は等しくなる。つまり、長期的な均衡においては、全ての国の実質利子率は等しくなるものと考えることができる。翻って各国の名目利子率に着目しなおすと、各国の名目利子率は実質利子率(世界共通)に各国の期待インフレ率を加えた値だということができる。

 

貨幣と為替レート

価格が貨幣市場の均衡条件(M/P=L*Y:Mは貨幣供給量、Pは価格水準、Yは所得、Lは定数)によって決定されるとすると、為替レートは

となる。右辺は貨幣供給の比を実質貨幣需要で除した値となる。

さらに、為替レートの変化率は以下のように表せる。

上述の通り為替レートの変化率はインフレ率の差で表せる。インフレ率は名目貨幣供給の増加率から、実質生産量の成長率を差し引くことで求められる。よって、為替レートの変化率は、名目貨幣供給増加率の差から実質生産量成長率の差を引くことで求められる。

 

(参考):

Feenstra, R. C., & Taylor, A. M. (2020). International Macroeconomics (5th ed.). Worth Publishers.