米国の年金や大学で積極化するオルタナティブ投資
米国の年金や大学がオルタナティブ資産への投資を増やしている。オルタナティブ資産とは、伝統資産と呼ばれる上場株・債券以外の資産の総称であり、不動産や、非上場株を扱うPE(プライベート・エクイティ)、ベンチャー企業に投資するVC(ベンチャー・キャピタル)、デリバティブ等を駆使して市場の変動に限らず絶対的な収益を目指すヘッジファンドなどがある。
ハーバード大学では、2020年の運用資産の約1/4がPEであり、ヘッジファンドは36%にものぼる。一方、上場株へのアロケーションはわずか20%にも満たない。
イェール大学でも、ヘッジファンドやVCが、それぞれ運用資産の20%以上を占める。
米国の大学の運用は、主に寄付金(エンダウメント)が運用原資である。この寄付金が主な運用原資となるため、大学の運用それ自体を「エンダウメント」と呼んだりもする。大学の運用は、短期的なリターンが求められるという性格のものではなく、長期運用が前提となる。オルタナティブ資産は、上場株など伝統資産に比べて換金がしづらく、流動性が低いものの、伝統資産よりも平均的なリターンが高いとされ、こうした長期運用の性格をもつエンダウメントにとっては好都合である。
カルフォルニア州職員の退職年金を運用するCalPERS(カルパース)では、大学の運用よりはオルタナティブ資産への配分は少ないものの、不動産やPEを中心に15%以上を占める(2020年)。
また、20年6月、米国における個人型の確定拠出年金である401kにおいて、PEを投資可能な資産に含める旨を労働省が発表した。
このように、米国の大学や年金においてオルタナティブ投資が活発であるといえる。しかし、日本の企業年金などの機関投資家を中心に、オルタナティブ投資への比重は少ない。
日本の公的年金を運用するGPIFでは、20年度より運用資産の5%を上限にオルタナティブ資産の運用を行うこととしたが、それでも米国に比べれば低水準である。
以上のような日米の現状を比べてどちらが良い、悪いという価値判断を行うべきではないと考えるが、今後、オルタナティブ投資への注目は高まっていくことは間違いないだろう。
参考:
https://finance.harvard.edu/annual-report
・イェール大学 ポートフォリオ
https://investments.yale.edu/reports
https://www.calpers.ca.gov/page/investments/about-investment-office/investment-financial-reports
・401kに関する報道
・GPIF オルタナティブ資産の運用方針
https://www.gpif.go.jp/investment/alternative/