<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

投資信託とスチュワードシップ活動・議決権行使の問題

f:id:hongoh:20210407214105p:image

近年、インデックス型投資信託(以下インデックスファンド)に代表されるパッシブ運用が世界的に増加している。巨額なインデックスファンドを複数抱えるブラックロックやバンガードといった資産運用会社が、世界を席巻している状況である。インデックスファンドは一般に低コストであり、世界経済が順調に成長すれば安定的にリターンを出せるので、個人・法人問わず投資家から支持されていると考えられる。

 

投資信託保有する株式の議決権は資産運用会社が持つ

インデックスファンドを中心に投信の運用額が増加するにあたり、投資家の投資先企業に対する行動規範を意味する「スチュワードシップ活動」、もっと言えば「議決権行使」が問題になってくる。

 

株式を運用するファンドにおいては、当然ながら株式を保有することになるので、ファンドを運用する資産運用会社が「株主」となる。多額の資金を有する年金や保険などの機関投資家が、個別株を保有する代わりにファンドを保有することになれば、彼らが積極的に議決権行使を行うことはできなくなる。あくまで議決権はファンドを運用する資産運用会社にある。とりわけインデックスファンドは短期的な売買というよりも長期的に対象銘柄を保有し続けることが前提となっているので、運用者に対してはスチュワードシップ活動がより一層期待されるとの声がある。

 

では、投資信託を運用する資産運用会社においては、議決権を行使するインセンティブはどの程度あるのか。例えばインデックスファンドは、市場に連動することをひたすらに目指すものである。そこで、インデックスファンドの運用者にとっては、個別企業の議案に対して議決権を行使して企業価値を上げようとする特段のインセンティブはない(と少なくとも論理的には考えられる)。

 

運用会社、機関投資家の取り組み

実際には、日本の資産運用会社は、株式を保有している各企業における議決権行使について、社全体としての方針をWebページに公表している。アクティブファンドだから、インデックスファンドだから、という区別がある訳ではない。

 

機関投資家側も、運用を委託している資産運用会社に関して、議決権行使を求めているケースがある。公的年金を運用するGPIFでは、委託する資産運用会社に対してスチュワードシップ活動・議決権行使に関する活動原則を掲げ、資産運用会社に対して積極的な行動を求めている。

 

いずれにしても、今後資産運用会社がスチュワードシップ活動や議決権行使を通じた企業価値向上において重要なプレーヤーとなることは間違いない。

 

参考①:スチュワードシップ活動 |年金積立金管理運用独立行政法人

参考②:公益財団法人 日本証券経済研究所金融商品取引法研究会研究記録第 73 号「インデックスファンドとコーポレートガバナンス