本ページでは、地方創生において地方銀行にどのような役割を求められているのかについてまとめたい。
地方創生の意義
政府は、2014年にまち・ひと・しごと創生本部を設置することを閣議決定し、地方創生を大きな政策目標の1つとして掲げたが、そもそも地方創生の意義とは何なのか。
一つには、東京一極集中の是正が挙げられる。地方の人口流出が続き、都市部に人口が集まれば、生活コストが上がり一人一人の生活水準は下がる。生活コストが上がれば子育てをする余裕もなくなってしまうので、少子化とそれに伴う人口減少が加速される。既に東京など都市部では見られている現象だが、それが一層加速するということだ。加えて、首都機能が分散されていないことは、災害リスクや安全保障上のリスクも付きまとう。
加えて、地方に特有の産業の存続が危ぶまれるということも考えられる。特に一次産業など、その地域の地形等を生かして生産を行っている企業がある。このような企業の中には、高い付加価値を生み出している企業が少なくないが、その地方から人が流出し、次世代の担い手がいなくなってしまえば、こうした企業の存続が難しくなってしまう。これは、日本経済全体にとっても大きなダメージである。
地銀の役割
「地方創生」という政策課題が掲げられている中で、地方銀行が担う役割とは何なのか。
いうまでもなくビジネスを行うにはお金が必要だ。地方銀行は、その地域の企業に融資を行うことで、企業の成長を支えている。そういう意味で、地銀は地域経済の土台を支えているといってもいいだろう。
そこで、多数の地域企業とリレーションを築いている地方銀行は、各企業の特性を踏まえて、その企業がどのようにしたら成長を続けられるのか、「事業性」に基づいて融資判断を行うことが期待されている。ただバランスシートを見つめて数字の上だけで融資の可否を判断するのではなく、ビジネスの中身をしっかりと見るということだ。この結果地域企業が無事成長すれば、その果実は融資をした地銀にも還元される。
また、後継者不足に悩む地域企業が円滑に事業承継ができるよう、支援を行うことも重要な役割であると考えられる。
こうしてみると、コンサルティング的な要素が今後強まっていくのではないか。地銀の経営環境が悪化する中で、地域経済の成長支援を通じて、自らも成長する、というビジネスモデルが一つの理想なのだろう(とはいっても、これを実現するのは一筋縄ではいかないだろうが…)。
参考:
藻谷 浩介(2007)『東京に依存しない国土構造のあり方』、国土交通省オンライン講演会