本ページでは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の概要についてまとめたい。
CDSとは
CDSは、簡単に言えば、取引先企業や保有している社債・国債の発行者等の破綻や支払い不能といったリスク(信用リスク)に対して、補償(プロテクション)を受けられるという金融商品で、クレジット・デリバティブ商品の一種である。
ある当事者(プロテクションの買い手) が別の当事者(プロテクションの売り手)に対してプレミアムと呼ばれる費用を支払う代わりに、対象となる企業や国(参照組織)の、倒産やデフォルト、不払い等のクレジット・イベントが発生した場合に、損失の補償を受けることができると いうものだ。
CDSの価格であるプレミアム(スプレッドと呼ばれることもある)が高いほど、一般的に参照組織の信用リスクが高いと考えることができる。
以下の図をもとに具体例を示す。
企業Aが企業Bの社債を1億円持っていたとする。企業Bの経営状況に疑問を持っている企業Aは、万が一の倒産リスクに備え、金融機関CとCDS契約を結び、金融機関Cに対して年率2%のプレミアムを支払う。1億円の社債を保有しているので、年間200万円の支払いだ。
ここで、企業Bが経営破綻してしまったとする。このとき、企業Aは、金融機関Cから1億円の補償を受ける権利を持つ。
ここでは、「参照組織」は企業Bということになるが、民間企業に限らず、国であっても以上の例は成り立つ。企業AがB国の国債を保有していて、デフォルト等の懸念がある場合、B国を参照組織として金融機関CとCDS契約を結ぶことができる(これをソブリンCDS)という。
CDSの目的
○リスクヘッジ
CDSの最も典型的な特徴は、信用リスクをプロテクションの売り手(上の例では金融機関C)に移転することができる点である。現物である債券やローンを移転しないまま、リスクだけをプロテクションの売り手に移転できるのは特筆に値する。
○投機
CDSの大きな特徴は、必ずしも参照組織の債券を持っていたり、取引関係を結んでいなくても、プロテクションの買い手となることができる、という点である。上の例で言えば、企業Aは企業Bと何の関係がなくても、金融機関Cから企業BについてのCDS契約を結ぶことができる(!)。よって、様々な企業や国の信用リスクに応じて、CDSを自由に売ったり、買ったりすることで、利益を得ることができる。
CDS市場に関する取引参加者などの具体的な状況については、三菱UFJ信託銀行のレポート(以下の参考文献)に詳しい。
参考:
全国銀行協会 金融法務研究会「金融取引における信用補完に係る現代的展開 第5章 クレジット・デフォルト・スワップ」
三菱UFJ信託銀行(2013)「日本における CDS 市場について」