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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

クレジットリンク債とは何か

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本ページでは、クレジットリンク債とは何かについてまとめたい。一言でいえば、「国債社債に、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を用いて別の企業の信用リスクを組み込むことで、より利率を高くした債券」ということができる。

 

CDSとは

クレジットリンク債についての話に入る前に、まず、CDSの概要について説明したい。簡単に言えば、取引先企業や保有している社債国債の発行者等の破綻や支払い不能といったリスク(信用リスク)に対して、補償(プロテクション)を受けられるという金融商品で、クレジット・デリバティブ商品の一種である。

 

ある当事者(プロテクションの買い手) が別の当事者(プロテクションの売り手)に対してプレミアムと呼ばれる費用を支払う代わりに、対象となる企業や国(参照組織)の、倒産やデフォルト、不払い等のクレジット・イベントが発生した場合に、損失の補償を受けることができると いうものだ。

 

CDSについては、以下のページに概念図とともに詳しくまとめているので、併せて参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

クレジットリンク債の仕組み

以下がクレジットリンク債の概念図である。 

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クレジットリンク債の概念図

上図の赤枠がクレジットリンク債の発行者である。発行者は、クレジットリンク債の発行に際して投資家から払込を受けた資金で国債社債等の安全資産を購入する。

 

さらに、CDS契約を通じて、発行者は金融機関等のカウンターパーティからプレミアムの支払いを受ける。反対に、参照企業のデフォルト等が発生した際には、発行者はカウンターパーティに対して補償を与える(そして、これは投資家の損失という形で転嫁される)。

 

そして、カウンターパーティからのプレミアム支払いを元に、投資家に利払いが行われる。

 

ここで、国債社債等の利回りに加えて、参照企業の信用リスクをとっていることで、投資家は上乗せされた利回りを享受できることになる。反対に、参照企業のデフォルトなどのクレジットイベントが発生した際には、元本が満額償還されることはないので、プレミアムの上乗せの分だけ、リスクも高くなっている金融商品といえるだろう。

 

なお、CDSを複数束ねて行う場合、「シンセティックCDO」と呼ばれる。シンセティックCDOについては、以下のページを参照されたい。

 

hongoh.hatenablog.com

 

(参考)

株式会社日本格付研究所(2012)「クレジットリンク商品

日本銀行(2015)「仕組商品投資のリスク把握と管理」