本ページでは、古典派経済学とケインズ派経済学の考え方の違いについてまとめたい。
古典派
古典派の経済学では、財の価格や賃金は伸縮的に変化し、需要と供給が均衡するように実物変数の水準が決まっていくと考える。また、価格が伸縮的に変化する状況では、貨幣量の変化は実物変数(生産、消費、投資など)に何ら影響を与えず、単に価格や賃金といった名目変数の水準を決定するのみであると考える(この考え方を古典派の二分法という)。
この仮定の下で、貨幣と価格について以下の関係が仮定される。
MV=PT
Mは名目貨幣量、Vは貨幣の流通速度、Pは物価水準、Tは実質取引量(これを実質GDP:Yと同等とみなすこともできる)を表す。
以上を踏まえたマクロ経済モデルは嶋村(2004)を参照。ここでは、労働需要と労働供給が一致する点で実質賃金(W/P)が決定され、常に完全雇用の状態となる。そして、貨幣供給は名目変数である名目賃金と物価水準のみに作用し、実物変数には何ら影響を与えない。
ケインズ派
一方ケインズ派は、名目賃金は硬直的(つまり伸縮的に動かない)と考える。さらに、流動性への選好を仮定する。つまり、流動性を持つ貨幣を保有することで人々は効用を得るが、その流動性を放棄し、債券等を保有することで、その対価として利子を得ると考えた。よって、人々の貨幣需要は利子率の減少関数(利子率が高ければ貨幣の保有を減らし、逆に利子率が低ければ流動性への選好のために貨幣保有を増やす)であるとした。
貨幣市場の均衡条件を数式に表すと
M/P=L(Y,r)
である。Lは貨幣需要関数で、貨幣需要は利子率の減少関数であると同時に生産量の増加関数である。
以上を踏まえたマクロ経済モデルも嶋村(2004)を参照。このモデルの下では、名目賃金が硬直的であり、仮に労働に超過供給(労働供給>労働需要)が発生しても、名目賃金は即座に調節されないため、失業が発生する。そして、古典派とは違い、貨幣は名目変数のみならず実質変数にも影響を与える。
一般に、長期においては価格が伸縮的であり、短期においては価格が硬直的であるとの仮定のもと、経済分析が行われることがある。
(参考):
嶋村紘輝(2004)「マクロ経済学の発展一古典派とケインジァンー」早稲田商学第401号