本ページでは、労働市場の均衡についてまとめたい。
均衡点における雇用量(横軸)と実質賃金(縦軸)は、右上がりの労働供給曲線と、右下がりの労働需要曲線の交点で決定される。
労働供給
家計の効用最大化問題により労働供給曲線は導出される。
家計は、余暇と消費財から効用を得るとする。余暇以外の時間は労働することとなり、労働によって賃金(名目)が発生する。所得は賃金のみであり、消費財は賃金所得によって購入が可能となる。家計は、効用を最大化するような余暇と消費財の量を決定する。ここで、ミクロ経済学の基礎で学ぶような、2つの財の消費決定の方法をこの問題に適用することができる。一つの財が余暇であり、もう一つが消費財である。
このとき、名目賃金はどのように考えたらよいだろうか。余暇を消費するということはその時間は働かないということであり、よってその分賃金は発生しない。すなわち、余暇を消費するためにあきらめなければならないお金という意味で、賃金は余暇の機会費用ということができる。より平たく言えば、賃金は余暇の価格である。そして、ここでの消費財の価格は、一般的な物価水準を表していると考えることができる。2つの財の価格比は、実質賃金率を表していると考えることができる(名目賃金/物価水準)。
ここで、賃金が上昇したとき、余暇と消費財の選択はどのように変わるだろうか。代替効果と所得効果を考慮することによってこれは明らかとなる。代替効果と所得効果については以下のページを参照されたい。
代替効果については、賃金が上昇すると余暇の価格は高くなるため、余暇を減少させ(労働を増やして賃金を稼ぎ)、消費財へとシフトすることが考えられる。
所得効果については、賃金が上昇するとあまり長時間働かなくても十分な所得を得られるため、余暇を増加させることが考えられる。
では、結局のところ賃金を増やした時に家計が労働を増やすかどうかは、代替効果と所得効果の大小によって決定されることが分かる。一般に、代替効果の方が所得効果よりも強いと考えられ、したがって賃金が上昇した際、家計は労働供給を増やすとされる。よって、労働供給曲線は右上がりになる。
労働需要
労働力を需要するのは企業である。生産要素を労働のみと仮定すると、企業の利潤最大化問題は以下のようになる。
π=PF(L)-WL
πは利潤、Pは財の価格、F()は生産関数、Lは労働量、Wは賃金である。
利潤最大化条件はπ'=0であり
F'(L)=W/P
となる。F'(L)は労働の限界生産性である。
生産要素についての一般的な仮定は、生産要素を増やしていくと限界的な生産性は低下していくというものである。人をとにかくたくさん雇ったとき、だんだんと追加的に1人雇うことによる生産量の増加分は減っていくことが考えられる。よって、限界的な生産性は低下するということができる。
この仮定のもと、上記の利潤最大化条件を見てみると、Lを増やした時、F'(L)は減少していなければならない。F'(L)は実質賃金に等しいので、労働需要量と実質賃金には負の関係があるということになる。よって、労働需要曲線は右下がりとなる。