本ページでは、コベナンツとは何かについてまとめたい。
コベナンツとは、社債発行や融資による借り入れを行う際、契約書に盛り込まれる債務者が負う義務や制限に関する条項のことである。
コベナンツが設定される場合
典型的には以下のようなケースでコベナンツが設定される。
シンジケートローン
複数の金融機関が同じ契約書に基づき借入人に対して貸付を行う取引。シンジケートローンにおいては多数の当事者が関与するため、契約書において権利義務関係を明確にする場合が多く、その中にコベナンツが含まれる。
プロジェクトファイナンス
プロジェクトファイナンスは、ある特定の事業に対する融資を行い、事業によって発生するキャッシュフローが返済の原資となり、担保がその事業に係る資産に限定される取引である。その事業のためだけに特別目的会社(SPC)を設立し、SPCに対して融資を行うという形をとる。事業が失敗しても、SPCが保有する範囲を超えての返済義務が生じない(元の会社まで及ばない)場合が一般的である。
コミットメントライン
コミットメントラインとは、あらかじめ銀行と借入人との間で定めた期間、融資枠の範囲内で、借入人が求めた時に銀行から融資を受けることができるという契約である。
コベナンツの内容
主なコベナンツの内容は以下の通りである(抜粋)。
主なコベナンツについて
①財務制限条項
○純資産維持条項 :純資産額を一定水準以上に維持する規定
○利益維持条項 :一定の利益水準を確保する規定
②投資適格維持条項(格付維持条項)
格付機関による格付を一定水準以上に維持する規定
③担保提供制限条項(ネガティブ・プレッジ条項)
本契約に基づく債務を除く借入人または第三者の負担する債務のために、担保提供を行わないことを規定
④パリパス条項
無担保債権等について、他の無担保債権と平等に扱うことを規定
みずほフィナンシャルグループ(2012)の資料より抜粋
コベナンツに抵触した場合
借入人がコベナンツに抵触した(違反した)場合、銀行は、「期限の利益の喪失」を実行するといった権利を持つ。「期限の利益の喪失」とは、元々定められた債務の返済期限を待たずに、一括で債務を返済することを求めることである。
現実の取引においてはコベナンツに抵触したからといって直ちに期限の利益の喪失を求めるのではなく、契約条件の変更等の措置にとどめるケースがある。
コロナ禍の資金繰り支援について
コロナウイルスが流行し始めた2020年、金融庁は金融機関に対して企業の資金繰り支援を要請した。
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえた資金繰り支援について(要請):金融庁
その中で、以下の通りの要請があり、コベナンツの柔軟な運用を求めている。
貸出等の条件となっている財務制限条項(コベナンツ)に事業者が抵触している場合であっても、これを機械的・形式的に取り扱わないこと、具体的には、①事業者の経営実態をきめ細かく把握し、直ちに債務償還等を要求することのないよう対応すること、②コベナンツの変更・猶予に関する事業者からの相談には迅速かつ真摯に対応すること、③特に、シンジケートローンにおいては、関係金融機関が協力して一体的に対応すること。
(出典):