分散共分散行列と現代ポートフォリオ理論
本ページでは、現代ポートフォリオ理論において計算するポートフォリオ全体の収益率の分散を、分散共分散行列を用いて表現する方法についてまとめたい。(理論の概要についてはここでは触れないので、他の参考書等を参照。)
分散共分散行列とは、ベクトルの要素間の共分散の行列である。単に共分散行列ということもある。例えば、要素A、B、Cからなるベクトルを考えた時、分散共分散行列は、
となる。対角要素の上半分、下半分は、まったく同じになっている(つまり対称)であることが分かる。
なぜこのような表現をする必要があるのか?ここでは、現代ポートフォリオ理論を例にとって考えてみる。
A、B、Cという3つのリスク資産からなるポートフォリオを考えるとき、それぞれのウェイトをwで表すと、ポートフォリオ全体の収益率の分散は
となる。各資産のウェイトのベクトルをW、分散共分散行列をΣで表すと、結局、ポートフォリオ全体の分散はW'ΣWとなり、非常に簡潔な形で記述することができる。
行列の演算等については以下のページを参照。
また、標準偏差をσ、相関係数をρとすると、以下のようにポートフォリオ全体の分散を表現することもできる。
これは、共分散をσ_xyとすると、相関係数は
となるためである。
相関行列との関係
相関行列とは、各要素の相関係数を並べた行列であり、上記の例においては
と表せる。
各要素(A、B、C)の標準偏差を対角成分とする対角行列(対角成分以外が0である行列)をDとし、相関行列をRとすると、
Σ=DRD
で求められる。また、各要素の標準偏差の逆数を対角成分とする対角行列をdとすると、
R=dΣd
で表すことができる。