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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

分散共分散行列と現代ポートフォリオ理論

本ページでは、現代ポートフォリオ理論において計算するポートフォリオ全体の収益率の分散を、分散共分散行列を用いて表現する方法についてまとめたい。(理論の概要についてはここでは触れないので、他の参考書等を参照。)

 

分散共分散行列とは、ベクトルの要素間の共分散の行列である。単に共分散行列ということもある。例えば、要素A、B、Cからなるベクトルを考えた時、分散共分散行列は、

となる。対角要素の上半分、下半分は、まったく同じになっている(つまり対称)であることが分かる。

なぜこのような表現をする必要があるのか?ここでは、現代ポートフォリオ理論を例にとって考えてみる。

 

A、B、Cという3つのリスク資産からなるポートフォリオを考えるとき、それぞれのウェイトをwで表すと、ポートフォリオ全体の収益率の分散は

となる。各資産のウェイトのベクトルをW、分散共分散行列をΣで表すと、結局、ポートフォリオ全体の分散はW'ΣWとなり、非常に簡潔な形で記述することができる。

行列の演算等については以下のページを参照。

hongoh.hatenablog.com

また、標準偏差をσ、相関係数をρとすると、以下のようにポートフォリオ全体の分散を表現することもできる。

これは、共分散をσ_xyとすると、相関係数

となるためである。

 

相関行列との関係

相関行列とは、各要素の相関係数を並べた行列であり、上記の例においては

と表せる。

各要素(A、B、C)の標準偏差を対角成分とする対角行列(対角成分以外が0である行列)をDとし、相関行列をRとすると、

Σ=DRD

で求められる。また、各要素の標準偏差の逆数を対角成分とする対角行列をdとすると、

R=dΣd

で表すことができる。