本ページでは、変量効果モデルについてまとめたい。
まず、固定効果と変量効果の違いについて、以下のページを参照されたい。
変量効果モデルは、個別効果と説明変数に相関がない場合に用いるモデルとなる。推定においては、一般化最小二乗推定量(GLSE)を用いる。
以下、行列を用いた表現が登場するので、行列に触れたことのない人は以下のページを参考にされたい。
一般化最小二乗推定量(GLSE)とは
まず、以下のモデルを考える。
Y=Xβ+ε
そして、誤差項の分散共分散行列は、一般に以下のように書き表せる。
OLS(Ordinary Least Squares)では、誤差項の分散は一定であり(均一分散)、かつ誤差項間の相関はゼロであることを仮定していた。このとき、分散共分散行列は以下のように表せる。
この誤差項に関する2つの仮定が成り立たないとき、GLS(General Least Squares)を用いることができる。まず、以下のような行列Ωを考える。
Σ^-1=ΩΩ'
分散共分散行列Σの逆行列を、Ωとその転置行列に分解している。そして、もとの回帰式の両辺にΩ'をかける。
Ω'Y=Ω'Xβ+Ω'ε
そして、Ω'Y=Y*, Ω'X=X*, Ω'ε=ε*と置き換える。つまり、
Y*=X*β+ε* … (*)
そうすると、ε*の分散共分散行列は、
となる。よって、均一分散、かつ誤差項間の相関はゼロという条件を満たしたことになる。したがって、この回帰式(*)に最小二乗法を用いればよい。
変量効果モデル
前置きが長くなったが、変量効果モデルについて、このGLSを用いて推定を行う。まず、パネルデータ(対象期間はT期、サンプルはN個)における以下のような回帰式を考える。
ここで、μは個別効果である。誤差項であるεについて、分散均一(σ_ε^2)であり誤差項間の相関がゼロであると仮定する。個別効果μについてもやはり分散均一(σ_μ^2)で、他の個人効果とは無相関で、誤差項εとも無相関であるとする。
このとき、個人iについてのuの分散共分散行列(T×T)は以下のようになる。
そして、上記の回帰式を行列で表現すると
Y=Xβ+u
となる。ここで、YはNT行一列のベクトル、説明変数の数をk個とするとXはNT行k列の行列、uはNT行一列のベクトルとなる。そうすると、uの分散共分散行列は以下のようになる。
この行列はNT×NT行列である。この行列は対角要素以外にも正の値が存在するため、OLSの仮定は満たされない。よって、GLSを用いる。GLS推定量は、
で与えられる。Ω^-1は、ΩのΣ*をΣ*^-1(逆行列)に置き換えたものである。
(参考):