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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

補償変分と等価変分について

本ページでは、補償変分(CV, compensating variation)、等価変分(EV,equivalent variation)についてまとめたい。

 

前提として、消費者が財を消費するとき、たくさん財を消費する方が効用は大きくなる。そして、予算制約の中で効用が最大になるように財の消費量を選択する。

 

ある財について、価格が変化したと仮定する。このとき、価格変化後の消費者の効用水準が価格変化前と等しくなるように消費者に一定の金額を補償する(または取り上げる)ことを考える。この金額が補償変分となる。


一方、価格変化前の状態で、消費者が価格変化後と同じ効用水準になるように、消費者から一定の金額を取り上げる(または補償する)ことを考えた時、この金額が等価変分となる。

 

以下、財1,財2の2つの財の消費量を決定することを考え、財1の価格が変化することを想定する。

補償変分

価格変化後、消費者は新たな予算制約に直面する。通常、新たな予算制約のもと効用最大化問題を解き、消費量が決定され、新たな効用水準が決まることになる。

 

しかし、価格が変化しても効用水準が変わらないように、予算を調節することを考える。価格が変わるので予算線の傾きは変化するが、効用は変わらないと仮定するので、価格変化後の予算線の傾き=限界代替率、の条件と、価格変化前の効用水準についての式から、価格が変化しても効用水準を維持するような財の組み合わせを求めることができる。各財の消費量に価格をかけて合計すれば、必要な予算が求まる。ここから価格変更前の予算を差し引けば、「価格が変更されても効用水準を維持するために調節すべき額」が求まる。これが補償変分である。

 

等価変分

価格変化後、通常のプロセスで効用最大化問題を解き、新たな効用水準を得るとする。

この新たな効用水準を、価格変化前の段階で得るために予算を調節することを考える。

 

価格変化前の予算線の傾き=限界代替率の条件と、価格変化後の効用水準の条件から、

価格変化前でも価格変化後の効用水準を得るような財の組み合わせを求めることができる。各財の消費量に価格をかけて合計すれば、必要な予算が求まる。価格変更前の予算からこれを差し引けば、「価格変化前でも価格変化後の効用水準を得るために調節すべき額」が求まる。これが等価変分である。

 

 

(参考):

明石光一郎(1995)「補償変分と等価変分のスルツキー近似」農業総合研究第 49巻第 2号