需要法則とは、価格と需要に逆相関がある、つまり需要曲線が右下がりになるというものである。この需要法則は常に成り立つのだろうか。
このことについて検証するために、ある財(財1)の価格が上昇した時の財の消費量の変化を、以下のように分解してみる。
価格上昇による消費量の変化=代替効果+所得効果
代替効果と所得効果については以下のページを参照されたい。
需要法則が成り立つなら、上式の左辺はマイナスにならなければならない。
代替効果
まず、代替効果についてみてみる。限界代替率逓減の法則を仮定すると、財1と財2の無差別曲線(財1が横軸、財2が縦軸)を考えたとき、財1の消費量が少ない所では無差別曲線の接線の傾き(すなわち限界代替率)は大きいが、消費量が増えていくとこの傾きは小さくなっていく。すなわち、無差別曲線は原点に向かって凸の形になる。この形状によって、財1の価格が上昇したとき(つまり予算線の傾きが急になるとき)に財1の需要量が増えることはなく、財2への代替が起こることが分かる。よって、限界代替率逓減の法則が成り立つとしたとき、代替効果はプラスにはならない。
所得効果が0の場合
もしこの財の所得効果が0である場合、上式より、消費量の変動は全て代替効果で説明できることとなる。そして代替効果は限界代替率の仮定の下では正にはならないので、このケースにおいては需要法則は成り立つ。
所得効果が0ではない場合①正常材
所得効果が0ではない場合において、この財が正常材のケースを見てみる。正常材と以下に出てくる下級材についての説明も、上述のリンク先のページで行なっている。
正常材の場合、所得(予算)が減ると消費量は減る。価格上昇は予算を減らすので、所得効果は負である。よってこのとき、上式より、価格が上昇した時に左辺がマイナスになるので、やはり需要法則は成り立つ。
所得効果が0ではない場合②下級材
次に、この財が下級材のケースを見てみる。所得が減ると消費量は増える。よって所得効果は正となる。
上式より、このケースにおいて需要法則が成り立つかどうかは、代替効果のマイナス分と所得効果のプラス分のどちらが大きいかにかかっている。所得効果のプラス分が大きい時、価格が上昇した時に消費量が増えることになるので、需要法則は成り立たない。こうした財のことをギッフェン財という。
現実にはこのギッフェン財はほとんど観察されず、基本的には需要法則は成り立つと考えられている。