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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

税効果会計とは何かについて平たく説明

本ページでは、税効果会計とは何かについてまとめたい。税効果会計は、一言でいえば、会計上の利益と税法上の課税所得との差異を調整するための会計処理ということができる。

 

会計上の利益と税法上の課税所得

法人税は会社が産み出した利益に対して課せられるものである。しかし、厳密には法人税は「課税所得」に対して発生する。それでは、会計上の利益と税法上の課税所得にはどのような違いがあるのか。差異が生まれる要因には例えば以下のようなものが存在する。

 

①貸倒引当金

会計上は、貸倒引当金は費用として処理される。しかし、貸倒引当金は会社の見積もりによって決定されるため、貸倒引当金を損金として認めてしまうと、課税所得を不正に低く操作できてしまう。そこで、税法上は貸倒引当金が損金としとして算入できる金額に制限がある。

 

減価償却

会計上は減価償却額は会社の見積もりに基づいて個々に決定されるが、上記と同様の問題意識から税法上は法定の耐用年数を適用しなければならない。

 

このように、会計上の利益と税法上の課税所得には差異が生じうる。

 

差異が生じることによる弊害

会計上は、税引前当期純利益法人税率を乗じることで税額を求めることができる。しかし、上述の理由から、会計上の利益と税法上の課税所得には違いがあるため、会計上算出された法人税額と、実際に納付しなければならない法人税額に差異が生じてしまう。

 

税法に則って計算された法人税額は、絶対的に支払わなければならない額なので、それは確実に費用として計上しなければならない。しかしその額は、会計上導き出される法人税額とは異なる。

 

そもそも会計の主要な目的は、会社がその期間にどれだけ収益を上げたかを的確に把握することにある。しかし、(会計上の方法とは異なる方法で計算された)法人税額のせいで、会計上の利益が過大に見えたり、あるいは過小に見えたりする可能性がある

 

例えばある会社における会計上の税引前純利益がt期、t+1期共に100であるとする。しかし、課税所得はt期に150、t+1期に50だったとする。税率が10%なら、t期には15、t+1期には5だけ法人税が発生する。これを会計上の税引前純利益から差し引くと、税引後の利益はt期に85、t+1期に95となる。税引前の会計上の利益はどちらの期でも変わらず、本質的には会社のパフォーマンスは変わらないのに、法人税のせいで税引後で見るとt+1期の方が儲かって見えてしまう。これでは、会計の主要な目的である「その期における企業の業績を的確に把握すること」が難しくなってしまう

 

一時差異

会計上と税法上で生まれる差異の中でも、最終的には解消される差異を一時差異という。一年の単位ではズレが生じていても、数年のスパンで見た時に最終的にはズレが無くなっているものが一時差異である。減価償却や貸倒引当金は基本的にこの一時差異に該当する。税効果会計は一時差異に適用される。

 

税効果会計

上述の問題点を克服しようとするのが税効果会計である。具体的には、(税法に則って)実際に支払った法人税額を、会計上計算される法人税額に調整する(合わせる)会計処理である。

 

①会計上の法人税よりも実際の(税法上の)法人税の方が多いとき

この場合、会計上の法人税額に合わせるために、減算調整を行う。具体的には、差額分だけ法人税を減少(法人税等調整額)させるのに対して、資産に「繰延税金資産」を計上する。当期において、会計上の法人税よりも多くの額を実際には支払ったので、将来は逆に会計上の法人税よりも実際に支払う額は少なくて済む。感覚的には先に多く支払ったのでその分後で得するから、その額を資産として計上するイメージである。将来においては、繰延税金資産を解消し、その分の法人税額を費用計上(法人税等調整額)する。

 

②会計上の法人税よりも実際の(税法上の)法人税の方が少ないとき

この場合、会計上の法人税額に合わせるために、加算調整を行う。具体的には、差額分だけ法人税を増加(法人税等調整額)させるのに対して、資産に「繰延税金負債」を計上する。当期において、会計上の法人税よりも少ない額を実際には支払ったので、将来は逆に会計上の法人税よりも実際に支払う額は多くなる。感覚的には今少なく支払ったのでその分後で多く支払う必要があるから、その額を負債として計上するイメージである。将来においては、繰延税金負債を解消し、その分の法人税額を減少(法人税等調整額)させる。