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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

DeFiとマネーロンダリングについて

DeFi(Decentralized Finance)は、暗号通貨市場において、様々な金融サービスをプログラムにより自律的に提供する仕組みである。Defiの明確な定義は存在しないが、FSB (2022)は「DeFi is based on distributed ledger technology (DLT) (typically public and permissionless blockchains) to offer financial services and products purportedly without the need for intermediaries.」と説明している。この報告書によると、DeFiサービスでロックされている資産の総額は、2021年12月には約1,000億米ドルとなり、2020年末の約4倍に達している。

 

DeFiは、スマートコントラクトを活用して構築・運用される。この技術により、特定の仲介者や管理主体を必要としない形で、金融サービスが自律的に提供される。DeFiを活用したサービスには様々なものが存在するが、代表的なものはDEX とレンディングがある。DEX(Decentralized Exchange)は、暗号通貨同士を交換する取引所の機能を、スマートコントラクトにより自律的に提供するサービスである。レンディングは、利用者から暗号通貨を預かり、これを貸し出す機能をスマートコントラクトにより自律的に提供するサービスである。

 

DeFiについては、特定の運営者・仲介者が不在で、サービスが分散化された主体に担われており、容易にサービスを開始・利用でき、匿名性も高いことから、責任主体を特定し、規制を課すことが困難となっている。また、一般的に取引相手の可視化と身元確認(KYC)も確保されない。そのため、必然的にマネーロンダリングのリスクは高くなる。実際、CryptoMondayの報告によると、Defiに関連するマネーロンダリングは、2022年の最初の2四半期で263%も増加している。

 

2022年3月にプレイ・トゥ・アーンのゲーム「Axie Infinity」用に構築されたDeFiネットワークである「Ronin Network」から、北朝鮮ハッカー集団である「Lazarus Group」により6億ドル以上の暗号通貨が盗まれるという事件が起こった。Lazarus Groupは、ミキシングサービスと呼ばれるいくつかの送金データを混ぜ合わせることによって送金を匿名化するサービスを用いてマネーロンダリングを行っていた。

 

こうしたDeFiプロトコルへの規制は、上述の理由から現時点では非常に困難なものとなっている。直近では、2022年6月30日にFATFが公表した暗号通貨に対するFATF基準の実施に関するターゲットアップデートの中で、member countries and the private sector “identify DeFi and [non-fungible tokens] as a challenging area for implementation of the FATF Standards.”と認めている一方、Defi プロトコルを一定程度コントロール可能な主体に対しては、依然としてFATF基準が適用されうることを明確にしている。

 

(出典)

日本銀行(2021)「暗号資産における分散型金融
—— 自律的な金融サービスの登場とガバナンスの模索 ——」日銀レビュー

cryptomonday.de

www.fatf-gafi.org

www.fsb.org