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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

NFTに対するAML規制の検討状況について

Non-Fungible Token(NFT)とは、ブロックチェーン上で発行されるトークンであり、トークン自体に固有の値を持たせた、non-fungibleなトークンである。この技術により、従来コピーが容易かつ無料なデジタルコンテンツ(例えばデジタルアートなど)に特定性と希少性をもたらすことが可能となった。厳密にはNFTそのものはデジタルアートではなく、NFTはその作品が本物であることを証明するとともに制作者や所有者を記録した鑑定書あるいは所有証明書のような機能を果たしている。デジタルアートは高値で取引されることもあり、10代の少年の作品が2000万ドル以上を売り上げたという例もある。

 

しかし一方で、近年、NFTの盗難と不正利益の資金洗浄が急増している。Ellipticの22年8月の報告によると、ブロックチェーン技術に基づくこれら資産の盗難額は過去1年間で1億ドルを上回り、7月だけでも4600以上のNFTが盗まれているという。さらに、NFTの売買や作成に使われるプラットフォーム上でロンダリングされている資金の額は、調査を開始した2017年以降で800万ドルを上回っている。

 

The Department of Treasury の2022年2月の報告書では、NFTを用いたマネーロンダリングの具体的なプロセスを分析している。一つの方法は、不正資金でNFTを購入し、自分自身との取引を行い、販売記録を残した後、資産を犯罪に関与していない他社に売却することで、クリーンな資金を得るというものである。また、仲介者を介さずにピアツーピアでデジタルアートの取引を行うことも可能であり、この場合は従来の芸術品に比べて移転が容易であり、より資金洗浄がしやすくなっているといえる。

 

NFTのプラットフォームそのものにもマネーロンダリングのリスクが存在する。NFT取引においてスマートコントラクトが用いられる。スマートコントラクトとは、ある条件で作動するプログラムをブロックチェーンに登録し、条件が満たされた際に自動的に作動させ、その結果をブロックチェーンに自動的に記録する仕組みである。このスマートコントラクトにより、NFTの売買時にプラットフォームやアーティストにロイヤリティという形で暗号通貨を分配することができる。この仕組みは、NFTプラットフォームが短期的な売買が行われる市場を形成するインセンティブを産むと考えられる。これは、つまり犯罪者によって資金洗浄がしやすい環境を意味する。

 

2022年6月30日にFATFが公表した暗号通貨に対するFATF基準の実施に関するターゲットアップデートの中で、収集品としてではなく、投資商品や支払い手段として使用されるNFTについては、バーチャルアセットの対象であると明記されている。バーチャルアセットを取り扱うバーチャルアセットサービスプロバイダー(VASP)は従ってFATF基準の対象となる訳だが、The Department of Treasury (2022) が指摘する通り、NFTプラットフォームは構造、所有権、運営方法において様々であり、デューデリジェンスプロトコルも様々である。したがって、各国がNFTプラットフォームに対して一様にAML規制を課すことについては大変な苦労が予想される。

 

(参考)

nftnow.com

www.elliptic.co

home.treasury.gov

www.fatf-gafi.org