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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

日本で国際金融センターを目指す目的とは?

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政府、東京都を中心に、日本で国際金融センターの確立を目指す動きが高まっている。世界中の金融機関が集積するニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどと並ぶ金融ハブを日本にも作るということだが、これによってどんなメリットがあるのかについて考えてみたい。

 

日本における金融業界の活性化

まず言うまでもなく、外資含め多種多様な金融機関が日本に集積し、競争が激化すれば、日本の金融業界は発展していくだろう。金融業は高付加価値な産業であり、金融業が発展していけば国内総生産の増加に大きく寄与する可能性がある。シンガポールや香港などの都市国家は金融業が主要な産業である。日本は伝統的に製造業に強みを持っていたが、「金融で稼ぐ」という新たな産業構造の可能性も考えられる。

 

また、外国の金融機関が多く日本に集積すれば、それだけ外国の労働者も多く日本に住むことになる。特に金融のプロフェッショナルは所得が多いので、日本に住めば多くのお金を日本に落としてくれるかもしれない。ただ、たとえ国際金融センターを実現したとしても金融プロフェッショナルが数十万単位で日本に来るかと言えばそれは甚だ疑問であり、それがどれほどの経済的なインパクトをもたらすかは不明である。

 

家計における良質な金融サービスの享受

家計にとってみれば、金融機関に資産を預け、その資産を増やしてもらえれば、この上なく望ましいことである。日本の金融業界において競争が促進され、家計により良質な金融サービスが提供されるようになれば、国民の間の「金融所得」の向上を見込むことができる。

 

日本における企業への資金供給の円滑化

金融機関、資産運用会社などが日本に集積し、日本企業の有価証券を多く取引するようになれば、それだけ日本でビジネスを行う企業が資金調達を行いやすくなる。よって、設備投資を含めリスクを取ってビジネスを拡大することのハードルが下がるので、結果的に企業の成長を通じた日本の経済成長が達成される可能性がある。

 

しかしながら、「日本企業に投資したい」と海外の金融機関や資産運用会社に思わせなければ、彼らが日本に拠点を設けることもないし、企業の資金調達も容易にならないだろう。

 

まずは日本企業に魅了があると思わせることが重要だと思われる。そのためには、コーポレートガバナンスの徹底など、日本の企業改革を進めていかなければならない。

 

仮に究極的な目標が「経済成長」にあるとすれば、国際金融センターの確立は車の片輪にすぎない。「日本企業の魅力向上」が、もう片方の車輪である。この二つが両輪で作用することで、金融機関が集積して資金供給主体が増え、結果企業の成長は加速し、さらに日本で取引を行いたい金融機関が増えて資金供給が活発化し…という好循環が達成されると考えられる。