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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

構造型・誘導型の信用リスクモデルについて

本ページでは、信用リスクモデルにおける構造型と誘導型についてまとめたい。信用リスクモデルにおいては、与信先のデフォルト確率を求めることが主要な目的の一つとなるが、大きく分けて構造型と誘導型の二つのアプローチがある。

 

構造型モデルにおいては、企業のデフォルトに至る過程が金融・経済理論上の仮定に基づき説明される。このアプローチの下では、こうした理論的な仮定に基づき、モデルにおける変数間の関係を推定することが求められる。構造型モデルの代表例にMerton(1974)がある。このモデルでは、デフォルトは企業の資産価値が債務額を下回った場合に発生するという前提に基づいている。デフォルト確率は、ブラック・ショールズ・マートンの公式を使って計算することができる。

 

これとは対照的に、誘導型モデルにおいては、変数間の理論的な因果関係を規定することなく、統計的に最も適切だと思われる変数を用いて最終的な解を導き出す。誘導型モデルでは、デフォルトの要因について何か事前に理論的な仮定を置くということをせず、企業の特徴等に関するデータとデフォルトの関係を実際のデータに基づいて統計的に推定する。ここで、デフォルトは外生的に観測されるものと考える。これらのモデルにおける独立変数について、企業規模やセクター、マクロ経済の状況等により、デフォルトとの関係性は変化しうる。そのため、誘導型モデルにおいては、その正確性がモデルの推定に使用されるサンプルに強く依存することとなる。

 

(出典):

中川秀敏(2008)「信用リスク・モデルの観望とその新展開-トップダウン・アプローチによるデフォルトの依存関係のモデル化-」現代ファイナンスNo.23