デリバティブはかつて、オフバランス取引として整理されていたが、2000年以降、時価会計の導入によってオンバランス取引として整理されるようになった。本ページでは、これについてその具体的な中身をまとめたい。
オフバランス取引とは
オフバランス取引とは、貸借対照表(バランスシート)に計上されない取引を言う。
デリバティブの特徴ー差金決済
先物やオプション、スワップといったデリバティブの大きな特徴に、「差金決済」がある。
通常、モノや株など現物の売買の際には、まず現物を「買って」、それから「売る」ことで、利益(あるいは損失)を確定できる。しかし、デリバティブ取引の場合、現物の受渡しを行わずに、売買により生じた価格差に相当する金額の授受のみでの取引が可能である。これを「差金決済」という。
先物取引を例にとって考えてみる。Aさんが10日後X株を100円で購入する約束をBさんとしていたとする。10日後、株価が120円になっていたので、Aさんはその株をすぐさまBさんに売却したとする。ここで、Aさんは20円の利益を確定できた。ここで、現物であるX株のAさん、Bさん間の引き渡しは行われず、差額である20円をBさんがAさんに支払うだけで、取引を終了させることができる。
X株についての取引なのに、X株の現物それ自体は取引には登場しない、こういった取引が可能なのである。
このように、通常の金融取引のように元本の交換は行われず、発生した損益にあたる額を一方がもう一方に支払うことで、決済が完了する。その意味で、貸借対照表に載ってこないオフバランス取引であった。
時価評価による「オンバランス化」
しかしながら、2000年4月以後、金融商品会計基準の原則適用に伴い、デリバティブ取引が決算期末時点で時価評価されたうえでバランスシートに計上されるようになった。
つまり、デリバティブ取引は決算期末で時価評価され、取得時と比べた損益をバランスシートに反映する必要がある、ということであり、オフバランスからオンバランスに変わった、と言うことができる。
では、デリバティブにおける時価評価とは何なのだろうか。デリバティブ取引は、将来の決済時点で差金決済を行うことにより、損益を確定させる。期末時点で予想される将来の決済時点における損益を、現在価値に割り引くことで、現在(期末時点)における損益として評価する。これが、デリバティブ取引の時価評価における基本的な考え方となる。