レバレッジ比率規制とは何か
本ページでは、レバレッジ比率規制とは何かについてまとめたい。
レバレッジ比率規制の概要
端的に、レバレッジ比率規制は以下の算式で求められる。
レバレッジ比率
= Tier 1 /エクスポージャー額≧ 3%
※G-SIBs(国際的な金融システムにおいて重要な金融機関)においては、さらに上乗せして自己資本を積むことが求められるなど、追加的な上乗せも存在する。
Tier 1とは、自己資本の中でも、普通株式や内部留保など、事業を継続しながらの損失吸収が可能な資本を指す。
分母のエクスポージャー額は、①オンバランス(バランスシート上の総資産)、②デリバティブ取引、③証券金融取引(SFT)、④オフバランスのエクスポージャーの合計として算出する。
エクスポージャーとは、価格変動のリスクに「さらされている」資産である。貸出であれば貸出額そのものがエクスポージャーどし、株などの他の資産は保有額そのものが価格変動のリスクにさらされているためエクスポージャーと呼ばれる。デリバティブは差金決済による取引であり、将来キャッシュフロー(勝ちポジション)がエクスポージャーとなる。
レバレッジ比率規制において重要なのは、分母のエクスポージャー額においては、自己資本比率規制のようなリスクウェイトによる調整がない点である。
自己資本比率規制の概要については、以下を参照されたい。
レバレッジ比率規制において、貨幣や国債などの安全資産も、株等の危険資産も等しくエクスポージャーとして加算されるために、こうした安全資産を多く保有する銀行などの金融機関は、語弊を恐れず言えば「不利」となる。よって、レバレッジ比率規制の導入により、安全資産の保有を減らし、相対的に総資産に占める危険資産の割合を高めるインセンティブが生じるとの研究もある。
レバレッジ比率規制の意味するところ
一般的にレバレッジとは、「少ない自己資金でその何倍もの金額を取引するしくみ」と言うことができる。具体的には、例えば100万円持っていたとしたら、200万円を証券会社から借りてきて、300万円の株を買う、といったイメージである。このとき、取引額は自己資金の3倍、つまりレバレッジは3倍ということになる。
レバレッジの基本的な考え方については以下を参照されたい。
レバレッジ比率3%以上とは、言い換えればレバレッジ33倍以下、ということである。
自己資本に比して過度な資産保有(つまり借入れや債券などの多くの負債によってレバレッジをかけること)を防ぐために、本規制は導入されている。
自己資本比率規制の補完的位置づけ
レバレッジ比率規制は、リスクウェイトによって調整を行う自己資本比率規制を補完するものという位置づけとなっている。
2008年の金融危機において、過度にレバレッジを拡大させていた金融機関が急速にレバレッジを解消させるプロセスを進めたため、資産価格の下落を通じて金融システムに損失が拡大し、危機が悪化する要因となった。
一方、このような金融機関のリスクベースの自己資本比率は、十分な水準が維持されていた。そのため、2009年4月のG20ロンドン・サミットにおいて、銀行システムにおけるレバレッジの拡大を抑制することに資する、簡素で透明性が高く、リスク・ベースでない指標によって、自己資本比率規制を補完することが合意された。
(出典):