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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

プットオプションによるヘッジについて

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本ページでは、プットオプションの売りヘッジについてまとめたい。

 

プットオプションの概要

オプションは、一言でいえば、ある商品を、決められた期日(または期間内)に、決められた価格で、売買できる権利ということができるというもの。デリバティブの一種である。
 

先物取引も似たものであるが、先物は期限が来たら必ず売買を行う必要があるのに対し、オプションはあくまで売買する「権利」であり、その権利を放棄する(何もしない)ことも可能である。
  

買う権利のことを「コールオプション」、そして売る権利のことを「プットオプション」という。

 

まず、オプションの買い手は売り手に対してプレミアム(オプション価格)を払い、売り手はそれと引き換えに権利(オプション)を提供する。買い手の権利が行使された場合、期限が来たら(あるいは期限中に)、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で売買が成立する。オプション価格、権利行使価格の2つの価格があることに注意。

 

プットオプション(売る権利)の買い手は、売る権利に基づき、現物で買って権利行使価格で売れば、満期において、

「権利行使価格―現物価格-プレミアム価格」が損益になる。

※権利行使価格<現物価格の場合、権利を行使しなければ良いので、損失の上限はプレミアム価格になる。

 

次に、ヘッジ取引を可能にする、オプションを含むデリバティブ取引の特徴を外観する。

 

特徴①:「売り」から始められる

通常、モノや株など現物の売買の際には、まず現物を「買って」、それから「売る」ことで、利益(あるいは損失)を確定できる。しかし、デリバティブ取引の場合、現物の受渡しを行わずに、売買により生じた価格差に相当する金額の授受のみでの取引が可能である。これを「差金決済」という。

 

例えば、Aさんが10日後X株を100円で購入する約束をBさんとしていたとする。10日後、株価が120円になっていたので、Aさんはその株をすぐさまBさんに売却したとする。このとき、Aさんは20円の利益を確定できた。ここで、現物であるX株のAさん、Bさん間の引き渡しは行われず、差額である20円をBさんがAさんに支払うだけで、取引を終了させることができる。

 

X株についての取引なのに、X株の現物それ自体は取引には登場しないまま、取引を行うことが可能なのである。

 

この特徴により、デリバティブ取引においては、「売り」から取引を始めることができる。通常何かを「売る」には当然モノを保有してないといけないが、まずモノを買って保有する必要がなく、最後に差金決済を行えば良いからである。売りから始めたければ、上記と逆の動きをすれば良いというわけだ。

 

特徴②:指数を売買できる

デリバティブ取引において、TOPIXや、日経225など、「株価指数」の売買が可能である。「指数を売買する」というのは直感的にイメージしづらいかもしれない。株価指数を構成する数百・数千種類もの現物株の受け渡しをいちいち行うのは、非常に困難である。しかし、上述の「差金決済」を行うことで、現物の引き渡しをせずに取引を成立させることができる。結果として、この「株価指数」の売買が盛んに行われている。

 

具体的なヘッジの考え方

以上、先物取引の特徴を概観したが、具体的にはどのようにして、プットオプションを用いたヘッジ取引により、マーケットの変動によるリスクを抑えているかについてまとめたい。

 

マーケット参加者は、株などの金融商品を安値で買って(あるいは高値で売って)、高値で売る(あるいは安値で売る)ことにより利益を得ようとしている。ここで、例えばある個別株Aの売買による利益は、マーケット(市場)全体の連動分(β)と、その株独自の価格変動要因(α)に分解することができる。

 

景気が良くてマーケット全体が好調なときには、βの値がプラスで、A株もあわせて上昇する傾向にある。そのA企業独自の企業努力により業績が改善した場合、市場の連動とは無関係に企業Aの株価が上昇する。これがαである。

 

この株Aを取引するとき、たとえ企業Aの業績が今後上がりそう(つまりαが生まれそう)だと思っても、マーケットが落ち込んでしまうと、株価の市場の連動分(β)が下落し、投資が損に終わってしまうおそれがある。

 

そこで、市場(β)が落ち込むと見込まれたときには、A株を買うのと並行して、マーケットを代表する指数オプション(例えばTOPIX)を市場が下がった場合に売り(つまりプットオプションを行使し)、そのときの市場価格で買い戻せば、A株の市場変動による価格下落を、オプション取引により得た利益(※高値で売って安値で買っているので)でカバーすることができる。個別銘柄のマーケット連動による減少(β)を、指数オプションを売る(そして買い戻す)ことでヘッジできる訳だ。