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取引情報蓄積機関(トレード・レポジトリー)とは

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本ページでは、取引情報蓄積機関(トレード・レポジトリー)とは何かについてまとめたい。

取引情報蓄積機関は、店頭デリバティブの取引情報を記録し、当局に報告する役割を担っている。

 

店頭デリバティブとは

まず、店頭デリバティブの概要について簡単に述べる。店頭デリバティブとは、取引所を介さずに、取引の当事者同士が相対で行うデリバティブ取引である。金利・通貨スワップや、CDSクレジット・デフォルト・スワップ)などが中心となる。

 

店頭デリバティブで取り扱うスワップ取引においては、取引相手が契約通りに支払いを行うことが前提となるスワップとは“交換”を意味するのだから、当然相手から貰うべきものを貰わなければ、“交換”は成立しない)。しかし、取引相手の財務状況が苦しく、契約通りに支払いができない可能性があり、それによって損を被る恐れがある。これはカウンターパーティリスクと呼ばれ、取引相手の信用リスクということもできる。

 

店頭デリバティブは、取引所を介さずに当事者間で行われる取引であるため、その実態・全体像が見えにくいことが特徴である。一方で、このカウンターパーティリスクが顕在化し、実際に取引相手からの支払いが受けられなくなった際、例えばこの返済をもって別のデリバティブ取引における支払いに充てようと考えていた金融機関がいるとすると、この支払いも滞ってしまうということになる。このように、一つのカウンターパーティリスクの顕在化が、他の取引参加者(典型的には金融機関)にも連鎖して広がっていくことで、金融システム全体に影響が広がる可能性がある。

 

 

取引情報蓄積機関の役割

このような店頭デリバティブに潜む構造的なリスクを抑えるため、2009年のG20ピッツバーグサミットにおいて、デリバティブ市場に関する監督方針が合意された。この中で、店頭デリバティブの契約が取引情報蓄積機関に報告されるべき、との旨が記載された。取引情報蓄積機関の存在によって、実態が見えにくい店頭デリバティブ市場の全体像を当局は把握することができるようになる。

 

日本における法規制

金融商品取引法 156 条にて、デリバティブを取り扱う金融機関や、売買の相手側に代わって債務の引受けを行い決済を履行させる清算機関等に対し、取引情報の保存と、内閣総理大臣への報告を義務付けている。金融機関は、取引情報を取引情報蓄積機関に保存したうえで、取引情報蓄積機関から内閣総理大臣に報告することもできる。取引情報蓄積機関は誰でもなれるものではなく、金商法においてその要件が規定されている。取引情報の保存・報告の対象は、上述の金利・通貨スワップや、CDSクレジット・デフォルト・スワップ)といった店頭デリバティブ等である。

 

出典:

FSB文書

URL:http://www.fsb.org/wp-content/uploads/r_101025.pdf

・金融法務研究会(2018)「デリバティブ取引に係る諸問題と金融規制の在り方 第4章」