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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

カウンターパーティリスクとは?

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本ページでは、デリバティブ取引におけるカウンターパーティリスクとは何かについてまとめたい。カウンターパーティとは、平たく言えば「取引相手」のことであり、「取引相手」に関するリスクだということができる。

 

市場デリバティブと店頭デリバティブ

まず、デリバティブ取引には市場デリバティブと店頭デリバティブの2種類がある。

 

市場デリバティブ

株式などと同様、取引所を介して行われる取引。商品先物・指数先物オプション取引などが中心。

 

店頭デリバティブ

取引所を介さずに、取引の当事者同士が相対で行うデリバティブ取引。金利・通貨スワップや、CDSクレジット・デフォルト・スワップ)などが中心。OTCデリバティブともいう。

 

スワップ取引CDSについての概要は、以下のページを参照されたい。

 

hongoh.hatenablog.com

hongoh.hatenablog.com

 

カウンターパーティリスクとは

店頭デリバティブで取り扱うスワップ取引においては、取引相手が契約通りに支払いを行うことが前提となるスワップとは“交換”を意味するのだから、当然相手から貰うべきものを貰わなければ、“交換”は成立しない)。しかし、取引相手の財務状況が苦しく、契約通りに支払いができない可能性があり、それによって損を被る恐れがある。これこそがカウンターパーティリスクであり、取引相手の信用リスクということもできる。

 

金融危機を誘発する恐れも

店頭デリバティブは、取引所を介さずに当事者間で行われる取引であるため、その実態・全体像が見えにくいことが特徴である。一方で、このカウンターパーティリスクが顕在化し、実際に取引相手からの支払いが受けられなくなった際、例えばこの返済をもって別のデリバティブ取引における支払いに充てようと考えていた金融機関がいるとすると、この支払いも滞ってしまうということになる

 

このように、一つのカウンターパーティリスクの顕在化が、他の取引参加者(典型的には金融機関)にも連鎖して広がっていくことで、金融システム全体に影響が広がる可能性がある。

 

清算機関の役割

そこで、取引を当事者間で終始するのではなく、中心に清算機関を置き、直接的なお金のやり取りを取引参加者と清算機関の間で行うことで、清算機関がカウンターパーティリスクを吸収することが期待される。これによって、たとえある取引参加者が破綻しても、その影響を清算機関が吸収し、他の取引参加者に連鎖しないようにすることができる。

 

こうしたことから、金融商品取引法第156条の62では、「店頭デリバティブ取引その他の取引のうち、取引高その他の取引の状況に照らして、その取引に基づく債務の不履行が我が国の資本市場に重大な影響を及ぼすおそれがあるものであつて、その特性にかんがみ、我が国において清算する必要があるものとして内閣府令で定める取引」においては、清算機関に自己及び相手方の債務を清算機関に負担させることを義務付けている(清算集中義務)。

 

さらに、清算機関には、無数のデリバティブ取引の債務・債権を差し引きする(ネッティング)機能があり、取引を効率化させる効果もある。

 

日本では、日本証券クリアリング機構がこの業務を担っている。

URL: https://www.jpx.co.jp/jscc/