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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

銀行におけるALMの考え方についてメモ

 

銀行におけるALM(Asset Liability Management)について。

銀行のバランスシートを見ると、一般に短期間での調達(負債)によって長期の運用(資産)を行っているという構造になっており、期間のミスマッチが存在している。

 

このミスマッチによって、金利リスクが生じる。金利リスクは、金利収益の変化と、経済的価値の変化という形で顕在化する。

もし資産と負債の期間構造が完全に一致している場合、シンプルに考えれば資産側と負債側での金利変動がパラレルになり、金利が変化しても金利収益には変化は生じない。例えば金利が上昇した場合を考える。負債側では金利上昇により支払金利が増えるので金利収益上マイナスだが、資産側では受取金利が増えるのでプラスになる。そして、ある同じ期間の資産と負債を考えてみたとき、資産の方が負債よりも保有額が多い場合、金利の上昇によって、金利収益は増加する一方、金利が減少すれば金利収益は低下する。

また、金利の変化は、資産や負債の経済的価値を変化させる。金利の変化に対する資産・負債の価値の感応度はデュレーションと呼ばれる。デュレーションは、キャッシュフローの平均残存期間としても定義される。つまり、期間の長い資産・負債ほど、デュレーションは大きくなり、つまり金利の変化に対する経済的価値の感応度も大きくなる。一般に金利が上昇すれば経済的価値は減少する。銀行の場合、負債よりも資産の方がデュレーションが長い場合が一般的である。よって、金利が上昇した場合の経済的価値の毀損が資産側でより大きくなることを意味する。資産の減少分と負債の減少分の差は自己資本(純資産)によって埋め合わされるため、金利の上昇は銀行財務の健全性に悪影響を及ぼし得る。もしデュレーションが資産と負債で完全に一致していれば、シンプルに考えれば金利が上昇しても資産と負債の経済的価値の減少はパラレルに動くので、自己資本への影響は生じなくなる。

 

金利リスク管理の観点から考えれば、資産側と負債側でマチュリティを同一にし、期間のミスマッチが生じないようにすれば、金利リスクは発生しないと考えられる。しかし、この期間のミスマッチが収益の源泉の1つであるという点も重要である。一般に、金利はマチュリティが長いほど高くなる。したがって、短期で調達し、長期で運用するモデルによって、金利収益を得ることができる。つまり、金利リスク管理と収益性にはトレードオフがある。どれほど資産と負債のミスマッチを許容し、金利リスクを取るかが、金利リスク管理上の重要な論点となる。