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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

AT1債とTier2債の適格要件について

本ページでは、AT1債とTier2債に算入される資本の要件がどのようにバーゼルⅢにて定められているかについて整理する。とりわけ、ベイルインを実現するために元本削減や株式転換がどのような条件の下実施されるかに着目する。

 

AT1

BCBSの公表している国際合意文書には、AT1資本として認められるための基準として16の要件を示している。このうち主な要件を要約すると、あるinstrumentがAT1として含まれるためには、普通株式以外で、負債より劣後し、償還期限がなく、仮に償還を行う場合でも原則として発行後 5 年以後にしか行ってはならず、社外流出(剰余金の配当・利息の支払)が一定の条件の下制限されている必要がある。また、そのinstrumentが負債性の場合は、実質的な破綻状態に至る前に、CET1比率が5.125%を下回った場合には元本の削減又は普通株式への転換がなされる、という特約が定められていることも必要となる。これはゴーイング・コンサーンベースのトリガーであると解釈できる。こうした特徴を備えた資本調達手段は、Contingent Convertible bonds(CoCos)と呼ばれる

 

さらに、負債性資本調達手段の場合に限らず、銀行が実質的な破綻状態に至った場合には関連当局の選択により元本の削減又は普通株式への転換がなされる、という特約が定められていることが必要となる。これはゴーン・コンサーンベースのトリガーであると解釈でき、このトリガーが生じた状態をPONV(Point of Non-Viability)という。

合意文書では、トリガーイベントを”(i)a decision that a write-off, without which the firm would become non-viable, is necessary, as determined by the relevant authority; and (ii) the decision to make a public sector injection of capital, or equivalent support, without which the firm would have become non-viable, as determined by the relevant authority” のいずれか早い方、あるいは”is determined by the jurisdiction in which the capital is being given recognition for regulatory purposes”としている。

 

ただし、次の条件が満たされている場合は、PONV条項を発行条件に含めなくても良いことになっている:“the governing jurisdiction of the bank has in place laws that:

(a) require such instruments to be written off upon such event, or

(b)otherwise require such instruments to fully absorb losses before tax payers are exposed to loss.”

この例外はTier2についても当てはまる。

 

Tier2

BCBSの公表している国際合意文書には、Tier2資本として認められるための基準として16の要件を示している。このうち主な要件を要約すると、あるinstrumentがAT1として含まれるためには、普通株式・AT1以外で、一般債務(劣後債務以外の債務)に劣後、償還期限が定められている場合は償還期限までの期間が 5 年以上であることが求められる。さらに、AT1と同様、銀行が実質的な破綻状態に至った場合には元本の削減又は普通株式への転換がなされるという特約が定められていることが必要となる。この特約におけるトリガーイベントはAT1と同様である。

 

AT1との主な違いは、ゴーイング・コンサーンベースのトリガー(CET1比率によるトリガー)がないこと、利払の制限が課せられていないこと、償還期限が5年以上であればよい(無期限である必要がない)ことなどが挙げられる。

 

(参考):

www.dir.co.jp