金融機関におけるブッキングについて
金融機関がトレーディングによってポジションを保有するとき、どの拠点にポジション計上(ブッキング)するか、という問題がある。
ブッキングの集約
グローバルな金融機関では、世界中の拠点において取引が行われているが、その取引が会計上どの拠点にブッキングされているかは、各社の戦略によって様々である。
例えば、東京においてトレーダーが実際の取引を行なっていても、ブッキングは海外で行うといったこともあり得る。要するに、各拠点の取引を集約してブッキングする「ブッキングセンター」の存在がある。アジアでは香港やシンガポールがイメージしやすいだろう。
ブッキングセンターへの集約のためには、まずは当然直接その拠点にブッキングする方法が挙げられる(リモートブッキング)が、他の方法として「Back-to-Back(バックツーバック)取引」というものがある。これは、マーケティング拠点(実際に取引を行う拠点)がブッキングセンターのトレーダーと反対取引を行うことで、事実上ポジションをブッキングセンターに移行する方法である。
ブッキング集約の目的
ブッキング集約の主要な目的は、リスク管理の高度化である。例えばデリバティブ取引であれば、取引によって信用リスク(カウンターパーティリスク)とマーケットリスクが生じるが、これらを世界各地の拠点で個別に把握するのではなく、ブッキングセンターに集約することができれば、リスク管理を行いやすくなる。
さらに、人的なリソースが豊富(例えばリスク管理に明るい人材が多いなど)な拠点にリスクを集約させることで、より健全なリスク管理の実現が期待できる。あるいは、金融規制の軽重は国によってことなり、自らのビジネスに有利な規制が敷かれている地域にブッキングを集中させるというインセンティブも考えられる。
ブッキングについては、例えば以下のような文献を参考にされたい。
(参考):
Deloitte LLP.(2015)「グローバル銀行のブッキングモデル 構造改革を成功させるために」
向井佑樹(2018)「グローバル・トレーディングにおける課税問題―独立企業原則の限界と定式配分方式の検討―」
Back-to-Back Swaps Explained in 3 Minutes | Chatham Financial