自社株買いはなぜ株主還元になるのか
本ページでは、自社株買いがなぜ株主還元になるのかについてまとめたい。
自社株買いとは
自社株買いとは、企業が自ら自社の株を買うことを意味する。自社株買いは、配当政策と並んで株主還元の手法の一つとされる。なぜ、自分の株を買うことが株主還元につながるのか。
PER低下を通じた株価の上昇圧力
その理由の一つに、「PER」という指標がある。
PER(Price Earnings Ratio)は、「株価収益率」のことである。株価と企業の純利益の比率を表しており、こちらもPERが低いほど株価は割安とみなされる。PERは以下の式で表される。
PER=時価総額÷当期純利益
または
PER=株価÷一株当たり当期純利益
PERの目安は15倍とされている。
PERは、「企業を買収したとき、その企業の収益によって買収額を回収するために要する年数」と考えることができる。なぜなら、時価総額(買収に要する額)を当期の純利益で割っているからである。PERが15倍の企業であれば買収額は15年で回収、という具合である。
自社株買いを行った場合、このPERはどのように変化するか。自社株買いは、市場に流通する株式を減少させる行為に他ならない。当期純利益は変わらず、発行株式数が減少するので、PERの分母である一株あたり当期純利益は増大する。分母の値が大きくなるので、PERは小さくなる。
直感的なイメージとしては、企業価値が変わらないまま、市場に流通する株式の数が減るので、一株当たりの「持ち分」が増えるということだろう。具体的には、配当の増額といった形で現れると考えられる。
また、企業の当期純利益(誤解を恐れず言えばその企業の稼ぐ力)は変わらないまま、PERが小さくなるということは、その企業が"割安"になることを意味し、PERが自社株買い前の水準に戻るまで、(PERの分子である)株価が上昇する圧力が生まれる。
すでにその企業の株式を保有している投資家からすれば持っている株の価格が上昇するため、自社株買いが株主還元と見なされる。
ROEの上昇
自社株買いはROEの上昇にも寄与する。ROE(Return on Equity)は自己資本利益率のことであり、自己資本に対してどれだけの利益を生み出したのかを示す指標である。
ROEは以下の式で表される。
自社株買いにより、分母の自己資本が減少すると、ROEが高まり、経営の効率性を高める指標であるROEが改善したことになる。
アナウンス効果
そのほか、企業が自社株買いを行うことで、その企業の株が割安であることを企業自らが示す「アナウンス効果」を通じた株価上昇の効果も考えられる。
(参考):
自社株買い(自己株式取得)は、なぜ株価にプラス?株主還元になる理由と、PERとROEの関係 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア