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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

外国投資家が中国本土へ証券投資する方法

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中国は、国外への資本移動を制限していることで知られる。本ページでは、海外の個人投資家機関投資家が、どのように中国本土の証券(株や債券)にアクセスできるのかについてまとめたい。

 

上海市場・深セン市場のB株

中国本土の株式市場である上海市場と深セン市場には、それぞれA株市場B株市場が存在する。A株は、人民元建てで、原則中国国内の投資家のみが投資可能である。B株は、外貨建ての株式で、海外個人投資家が自由に投資できる。しかしながら、B株はA株に比べて上場されている株の種類が著しく低い。

 

香港市場

中国本土で登記された中国企業の株式で、香港取引所に上場しているものをH株という。また、中国本土以外で登記された中国資本の企業の株式うち、香港取引所に上場しているものをレッドチップという。香港市場に上場している中国株については、海外投資家もアクセス可能である。

 

 

上記の通り、中国株のメインとなるA株は基本的に中国国内投資家向けだが、以下のような制度により、海外投資家のアクセスが一部認められている。

 

QFII(Qualified Foreign Institutional Investors、適格海外機関投資家

主に海外の機関投資家が、中国当局から個別に認可を受けることで、A株や債券へ投資が可能となる制度であり、2002年に導入。与えられた投資枠を上限として投資が可能となる。その後、外貨ではなく人民元建てで資産を購入できるRQFII(人民元適格外国機関投資家)が登場。

 

ストックコネクト

香港の取引所を通じて、上海、深センのA株の一部の銘柄を直接購入することを可能とする制度であり、2014年に導入。QFIIとは違い、事前に当局から認可を受ける必要がない。さらに、機関投資家のみならず個人投資家も売買可能なので、この制度の導入により本土への証券投資のハードルはずっと下がったといえる。

 

ボンドコネクト

こちらは、債券について、やはり香港を通じて中国本土の債券にアクセスできる制度で、2017年に導入。海外投資家は、香港の決済機関に口座を開設することで、香港経由で中国本土の債券市場にアクセスすることができる。中国当局からの認可は不要であるが、機関投資家が対象となる。対象となる債券は、中国の銀行間債券市場で流通する政府債(中国政府が発行)と、金融債(金融機関が発行)、社債等である。

 

ウェルス・マネジメント・コネクト

さらに、中国当局は香港と中国本土の間で、一定の投資限度額内で双方の金融機関が販売する金融商品の相互投資を認めるウェルス・マネジメント・コネクトを2021年中にも解禁するとの報道が出た。これまでの株、債券のコネクトにとどまらず、投資信託を含めた金融商品に拡大するという。

 

海外投資家にとっては中国の金融商品への投資機会が増えることを意味するが、海外の金融機関にとっては同時に、中国の富裕層を中心とした新規顧客の開拓につながるとの見方もある。

 

 

 

以上、中国本土への証券投資の方法をまとめたが、今後さらに規制が緩和し、外国投資家にとって投資しやすい環境が整っていく可能性はある。

 

(参考)

野村資本研究所(2017)『中国における資本市場の双方向の開放の試み-深圳・香港ストックコネクトの始動-』、野村資本市場クォータリー2017 Winter

 

 

野村資本研究所(2017)『中国・債券市場への新たな投資ルートの導入-ボンドコネクトの始動』、野村資本市場クォータリー2017 Autumn

 

 

齊藤尚登(2014)『オフショア取引拡大機運等にみられる人民元国際化の動き〜その背景と今後〜』、月刊資本市場

 

 

王 剣虹(2006)『A株とH株の重複上場と発行価格』、關西大學商學論集