「コア業務純益」と投資信託解約益の問題
本ページでは、主に地銀の収益性の文脈で議論される「コア業務純益」と投資信託解約益についてまとめたい。
銀行の収益性
銀行の決算資料を見ると、財務諸表の数値の他にも、収益性や健全性を示す指標が様々開示されている。
業務粗利益
銀行粗利益とは、銀行本来の業務の収支である「資金運用収支」、「役務取引等収支」、「特定取引収支」、「その他業務収支」の合計である。
実質業務純益・業務純益
銀行の収益力を計るには、経費を差し引いた純利益も見る必要がある。業務粗利益から経費等を差し引いたものが実質業務純益で、さらに一般貸倒引当金繰入額を除いたものを業務純益といい、銀行が本来の業務活動で稼ぎ出した1年間の利益ということになる。
コア業務純益
業務純益に、一時的な変動要因を取り除いたもの。具体的には、「コア業務純益」=「業務純益」+「一般貸倒引当金繰入額」-「国債等債券関係損益」で表すことができる。
コア業務純益と有価証券関連損益
株や債券などの有価証券売買によって生じた損益は、コア業務純益に含まれていない。一方、投資信託の解約益はコア業務純益に含まれている。投資信託への投資も結局は株や債券などの有価証券への投資と同じなので、両者の取り扱いの違いに疑問の声も上がっていた。
地方銀行にとっては、金利の低下に伴う貸出による収益の減少の中で、本業の収益力を示すコア業務純益を上げるために、投資信託の購入をさせることが一つの戦略となる。地銀は、機関投資家向けの投資信託である私募投信の購入を増やしていた。
金融庁の対応
本業の収益率を示すコア業務純益が、投信の解約益の存在によって、有益な、横比較可能な指標でなくなってしまうおそれがある。
金融庁は、2019年、「銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)」を公表し、投信解約益を除くコア業務純益の開示を求めた。
これにより、投信の解約益によって収益力を高く見せることができなくなってしまったため、地方銀行の有価証券関連業務のあり方が今後変わってくる可能性がある。
(参考)
金融庁HP「「銀行法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に関するパブリックコメントの結果等について」
全国銀行協会(2016)「やさしい銀行の読み方」