コーポレートガバナンスとはそもそも何なのか?
「コーポレートガバナンス・コード」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。企業統治のあるべき姿についてその原則が示されたものである。行政や投資家の要請もあり、企業経営の透明性が年々重視されている。
本ページでは、そもそも「コーポレートガバナンス」とはどのような概念なのかについてまとめたい。
経営の規律付けの必要性
株式会社は、「所有と経営の分離」の原則に則り、実際に経営を行う人と、企業を株式といった形で所有している人とが分離されている。企業を所有している株主(プリンシパル)に代わって、経営陣(エージェント)が経営を行う。
このように、企業経営においてはプリンシパル-エージェントの関係が存在する。ここで、エージェント(代理人)は、プリンシパルのために代理で裁量的に役務を担っているのに加えて、プリンシパルは情報が十分にないためにエージェントの行動をコントロールできないことが重要である(いわゆる情報の非対称性)。いわばエージェントの方が優越的な立場にあるため、プリンシパル(株主)の利益よりも自らの利益を優先させることが可能になってしまう、ということである。
このような構造上の問題から、エージェントである経営者でも、プリンシパルである株主でもない、第三者による規律付けが必要であり、これがコーポレートガバナンスの基本思想であると言える。
日本では伝統的に、銀行がこの「第三者」の役割を担ってきた。企業の資金調達手段は銀行が中心であったからだ。しかし、近年の資金調達手段の多様化や投資家の要請により、以下に示すような欧米型の規律付けも定着しつつある。
「第三者」による規律付け
「第三者」として、挙げられるのは社外取締役である。社外取締役は、取締役会において経営に関する意思決定を行うのはもちろんのこと、業務の執行役の監督を行うことで業務が適切に遂行されているかを検証する。この「第三者」の存在により、情報の非対称性から生じるモラルハザードを防止することが期待される。
また、事業が終わった後の事後的なモニタリングとして、外部監査人の役割も重要である。さらに、企業に積極的な開示(ディスクロージャー)を求めることで、外部の目による監視をより機能させることも行われている。
以上のように、企業経営における構造的に存在するプリンシパル-エージェントの関係によるモラルハザードの防止のため、第三者による規律を行うことが、コーポレートガバナンスにおいて重要となる。
(出典):
福田慎一(2014)「金融論 市場と経済政策の有効性」有斐閣