本ページでは、マーケットにおいて取引を行う上で発生するコスト(取引コスト)についてまとめたい。一番わかりやすいのは取引所や証券会社に支払う売買手数料や、収益に対する税金などであるが、それ以外にも様々なコストが存在する。以下、代表的なものを紹介する。
①マーケット・インパクト・コスト
機関投資家などがある銘柄を大量に買い注文すると、その銘柄のマーケットにおける需要が(その機関投資家だけによって)増えるため、市場価格は上昇する。注文前の価格よりも高い価格で購入することとなるため、れっきとした「コスト」であると考えることができる。売り注文の際も同様である。
大量に売り注文を出せば市場価格が下がり、予定よりも低い値段でしか売れない可能性がある。大量注文が与える市場価格への影響によって生じるコストなので、「マーケット・インパクト・コスト」と呼ばれる。
②ビッド・アスク・スプレッド
市場取引は、銘柄を売りたい人が提示する「売値」と、買いたい人が提示する「買値」が一致して初めて成立する。しかし、売りたい人が「高値でないと売らない」と言い張り、買いたい人が「安い値段でないと買わない」と言い張っていたとすると、取引は成立しない。
例えばある銘柄Aについて、市場で提示されている買値の最高値が100円(100円以上で買うという人がいない)とし、提示されている売値の最安値が120円(120円以下で売ってくれる人がいない)だとすると、取引は成立できない。この差(20円分)は、ビッド・アスク・スプレッドと呼ばれる。ビッドは「買値」、アスクは「売値」を意味する。
どうしても銘柄Aを買いたい投資家は、泣く泣く120円で買うしかない。すると、想定していたよりも20円分多く払うことになり、追加的なコストが発生したということができる。
ある銘柄の取引が活発で、買値の提示と売値の提示がたくさんのマーケット参加者によって行われているとき、その銘柄の流動性が高いというが、こうしたときには、ビッド・アスク・スプレッドは小さくなる。一方、取引が少なく、買値と売値の提示が少ない銘柄については、しばしば同スプレッドは大きくなる。よって、ビッド・アスク・スプレッドの大小は、その銘柄の流動性の大きさを示していると考えられる。
③遅延コスト
ある銘柄について、売買を行うと決定してから実際に取引が執行される間に価格が変わってしまうとき、不利な方向に価格が動けばその変動が追加的なコストとなる。市場価格は常に変動するので、取引の執行に手間取っているとその間にどんどん価格は変わってしまう。
以上のような手数料や税とは別のコストを、できるだけ少なくして取引の執行を完了させることは、まさにトレーダーの腕の見せ所となる。
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