<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

経済学的観点からみた政府の意義とは?


本ページでは、経済学的な観点からみた政府の存在意義についてまとめたい。

 

一般に、政府の存在意義は以下の3つに整理される。

 

資源配分

一般に、資本主義経済の下では、資源配分は市場原理によって行われている。完全競争市場の下では、個人・企業の利己的な行動が、 結果的に市場における価格調整メカニズムによって、最適な資源配分が実現するという考え方である。

 

しかしながら、市場メカニズムが現実の経済で完全に働くことは中々難しい。例えば、

  • ある財の経済を1社が独占している場合、その企業が価格を決定できる力を持ってしまう
  • 本当は劣悪な(価値の低い)財であるのにもかかわらず、質の高い(価値が高い)財であるかのように見せかけて家計に供給する( 情報の非対称性)
  • 財の生産の過程で公害を発生させ、市場取引の外で家計の効用を下げる
  • 社会的に重要であるにも関わらず、市場メカニズムでは供給が十 分に行われない財が存在する

 

などが挙げられる。これらは、市場が適切に機能しない状況であり、「市場の失敗」という。

 

現実にはこうした市場の失敗はいたるところで起きており、これを是正し、適正な資源配分を実現することが主要な政府の役割であると考えられる。

 

所得再分配

資本主義経済の下では、所得格差・富の格差が大きくなっていく懸念がある。この格差をどの程度容認するかについて、各国政府の方針は多かれ少なかれ異なるし、政治思想によっても考え方は異なる 。ただ、一定程度格差を是正する必要があるとの立場に立てば、政府の役割は非常に重要である。

 

具体的には、高所得者や資産を多く持つものから多く税金を取り、 それを社会的弱者に公的なサービスとして還元することで、所得の再分配が可能となる。


経済安定化機能

不況などの経済的なショックや、金融危機が生じたとき、一時的に 多くの失業者が発生して、人々の暮らしが苦しくなることが予想される。
市場原理にこの回復を委ねるべきという考え方もあるかもしれないが、回復までには多大な時間を要する可能性がある。
したがって、経済の大きな落ち込み(または反対に経済の過度な加 熱)を是正を通じて、国民の生活の安定を目指すことは政府の重要な役割の一つとして考えられている。

 

(参考):

持田信樹(2009)「財政学」東京大学出版会

土居丈朗(2018)「公共経済学」日本評論社