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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ISバランスとは何か

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本ページでは、ISバランスとは何かについてまとめたい。 ISバランスとは、一言でいえば、経済全体で見た貯蓄と投資のバランスのことである。
 

三面等価の原則

ISバランスを理解するためには、まずGDPの「 三面等価の原則」を知る必要がある。三面等価の法則とは、GDPは生産面から見ても支出面から見ても分配面から見ても、同じ値になるというものである。


GDPを支出面から見ると、ある国において生産されたものは、 国民によって消費されたか(C)、 企業等によって投資されたものか(I)、 政府によって支出されたものか(G)、国外に輸出されたもの(厳密には海外から輸入されたものとの差引き、つまり純輸出あるいは経常収支)(EX)ということができる。従って、


Y=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+EX(純輸出)


一方で、GDPを分配面から見ると、 国内で生産された物は国民に所得という形で分配される。 その所得は、消費として使われるか(C)、貯蓄に回るか(S)、 租税負担に使われるか(T)、のいずれかである。よって、

 

Y=C(消費)+貯蓄(S)+租税(T)


 となる。

ISバランスとは

上記のように、 支出面からみたGDPと分配面からみたGDPを整理した。

 

支出面からみたGDP
Y=C+I+G+EX

 

分配面からみたGDP:
Y=C+S+T

 

この2式を使ってYを消去すると、
C+I+G+EX=C+S+T

 

両辺にCがあるのでこれを消去し、さらに変形すると、

 

(S-I)+(T-G)=EX

 

となる。この式の解釈は、 民間部門の収支と政府部門の収支の合計は、 海外への純輸出に等しいということである。


このことの意味について考えてみる。まず、 いったん議論の簡単化のために政府部門を無視して考え、(S- I)の部分に着目する。もし仮にS-I=0、つまりS= Iであるとき、消費と租税に使われず蓄えられた資金は、 全て国内の投資に回ったということを意味する。一方、S> Iであるときには、 国内で蓄えられた資金の全てが国内の投資に回ったわけではなく、 一部は海外に振り分けられていることを意味する。逆に、S< Iのときには、国内の蓄え以上のお金が投資されており、 足りない分は海外から借り入れていることを意味する。
 
このISバランスによって、国全体の貯蓄と投資のバランスを検証することができる 。また、このISバランスは、家計のISバランス、 民間企業のISバランスといったように、 主体別に見ることもできる。各主体が貯蓄超過なのか、 貯蓄不足なのかを検証することができる。


日本について言えば、家計、民間非金融部門共に、 貯蓄超過が継続している。この貯蓄超過は、 日本が海外に資産を多く持っていることを意味する。