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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

「決済」とはそもそも何なのかについて考える

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「決済」は、日常生活の至る所に登場する。 スーパーで食料を買うとき、電車に乗るために改札を通るとき、 大学に行くために授業料を払うとき…
決済の方法も様々なものがあり、現金での決済はもちろんのこと、 クレジットカードや電子マネー、 最近だと暗号資産等も決済手段になりつつある。
 
しかしそもそも、「決済」とはどのような行為なのだろうか。
 

債務と債権の解消

物やサービスを取引するとき、 一方からもう片方に物やサービスが移転され、 その反対にお金が移転される。


例として、AがBから本を買う取引を考えてみたい。BがAに本を渡すのと引き替えに、AはBに代金を支払う。ここで、本について見てみると、 AはBから本を得る権利があるという意味で、 債権者ということができる。反対に、 BはAに対して本を渡す義務があるという点で、 債務者であるということができる。


反対に、お金についてみると、 AはBにお金を支払う義務があるので、 債務者ということができる。一方、 BはAからお金を得る権利があるので、 債権者ということができる。


このように、物やサービスを取引するとき、双方が債務者であり、 債権者なのである。ある取引には、物・サービスについての債務・ 債権の関係と、お金についての債務・債権の関係がある。決済とは、この「お金についての債務・債権の関係」 を解消すること、に他ならない。
 
通常、日々の買い物においては、物・サービスについての債務・ 債権の関係の解消(以下、物・サービスの受け渡しという) と決済は同じタイミングで行われる。上記の例で言うと、 本屋のレジで本の受け渡しが行われると同時に、 現金等により代金が支払われるため、双方の債務・ 債権の関係が解消される。また、少し高い買い物では、 クレジットカードがよく使われる。 クレジットカードによる決済は、物・ サービスの受け渡しのタイミングよりも後に行われる。 法人間の取引になると、小切手も使用される。こちらについても、 物・サービスの受け渡しのタイミングよりも後に決済が行われる。
 

 

決済におけるリスク

決済におけるリスクは主に以下の2つがある。物・ サービスの受け渡しと決済が同じタイミングで行われることが多い日々の買い物においてはあまり意識されることはないが、物・ サービスの受け渡しと決済のタイミングが異なったり、 金額の規模が多かったりすると、 こうしたリスクが顕在化することがある。


①信用リスク

まず、決済とは必ず相手がいる行為である。 相手の財務状況等により期日までに支払いが完了しない可能性が有り、これは信用リスクと呼ばれる。


流動性リスク

もう一つは、支払うべきタイミングに支払うことができないリスクで、流動性リスクと呼ばれる。例えば、保有している不動産を売却して得た資金で何かの返済に充てようと考えたとき、不動産が思うように売却できず、よって現金化できないため返済ができなくなる可能性がある。このように、交換がしにくい資産を「低流動資産」といい、このような低流動資産を多くか抱えると、決済における流動性リスクは高まる。

 

(出典):

福田慎一(2014)「金融論 市場と経済政策の有効性」有斐閣