RCAP(規制整合性評価プログラム)とは何か
本ページでは、RCAP(規制整合性評価プログラム)とは何かについてまとめたい。RCAPとは、一言でいえば、バーゼル規制における内部モデルによるリスクアセット算定が各国でバラツキのないよう、各国間の規制の一貫性・整合性を目的とするものである。
バーゼル規制における「内部モデル」
バーゼル規制の主な内容は、金融機関を対象にリスクアセットに対して一定の自己資本比率を求めるものとなっている。リスクアセット算出にあたっては、高度なリスク管理を行う銀行は、金融規制当局に承認を受ければ銀行自身の内部モデルを用いる「内部モデル手法」を使用することができる。
内部モデル手法を用いることで、銀行内部でのリスク管理を規制対応においても利用できる。さらに、特定の銀行ではなく広く一般的に利用されるために設計された標準的手法に比べ、よりリスクを精緻に計測することができるため、標準的手法よりもリスクアセット算出額が小さくなり、自己資本比率を改善できる傾向にある。
しかし、バーゼル規制の策定を担う「バーゼル委員会」による調査によると、内部モデル手法を使用したリスクアセットの計算において、銀行によってかなりのばらつきがあることが明らかとなった。
RCAPの概要
バーゼル委員会は2012年に、各国のバーゼル規制適用にあたり規制の一貫性や整合性を確保する目的で、各国の適用状況を評価し、国によって規制のばらつきが生じることを防ぐために規制整合性評価プログラム(Regulatory Consistency Assessment Program; RCAP)を開始した。
そこでは、各種リスク(信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスク)に関して、内部モデルを利用する銀行を対象にリスクアセット計測の適切性について検証を行った。その結果、それぞれのリスクにおいて、内部モデルによって計測されるリスクアセットに銀行間で大きなばらつきがあることが判明した。つまり、モデルの適用方法の違いにより、ある金融機関は他の金融機関よりも自己資本比率を低く算出しているということであり、現状を正しく横比較できているとは言えないのである。
RCAPを通じて、規制の各国間の一貫性を担保するために、内部モデル手法で計測されるリスクアセットのばらつきの是正が強く認識されることとなった。
(参考):
磯部昌吾(2018)『バーゼル委員会による信用リスクの内部格付手法(IRB)の見直しの最終化』 野村資本市場クォータリー2018
小立敬(2015)『バーゼルⅢを越えて進む国際金融規制改革』