本ページでは、最終指定親会社とは何かについて、金商法の条文を見ながら確認していきたい。
金商法上の規定
最終指定親会社についての規定は、金商法第五十七条の十二に定められている。
まず、「指定親会社」とは何か、から見ていこう。
第二款 指定親会社
(指定等)
第五十七条の十二 内閣総理大臣は、特別金融商品取引業者の親会社(第五十七条の二 第八項に規定する親会社をいう。以下この節において同じ。)又はその子法人等が次に掲げる要件のいずれかに該当する場合において 、当該親会社及びその子法人等の業務の健全かつ適切な運営を確保することが公益又は投資者保護のため特に必要であると認められるときは、当該親会社をこの款の規定の適用を受ける者として指定するものとする。(以下略)
※原文に下線を追加
ここで、「特別金融商品取引業者」とは、平たく言えば総資産額が一定の規模を超える第一種金商業者で、内閣総理大臣に届出を行った者である。
下線部の通り、特定金融商品取引業者の親会社や子会社等が、業務の健全かつ適切な運営を確保することが公益又は投資者保護に必要であるとされた場合、その親会社は「指定親会社」と認定される。
そして、「最終指定親会社」についての言及は以下のとおりである。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、書面により、その旨並びに当該指定に係る特別金融商品取引業者(以下「 対象特別金融商品取引業者」という。)の商号及び当該指定を受けた者(以下「指定親会社」という。)が最終指定親会社( 指定親会社であつて、その親会社のうちに当該指定親会社と同一の対象特別金融商品取引業者に係る指定親会社である会社がないものをいう。以下この款において同じ。)であるか否かの別を当該指定親会社に通知しなければならない。これらの事項に変更があつたときも、同様とする。
※原文に下線を追加
要するに、指定親会社の頂点に位置するもの、が最終指定親会社であるということになる。野村證券を例にあげると、野村證券の親会社である持株会社の「野村ホールディングス」が、最終指定親会社ということになる。
最終指定親会社に対する規制
最終指定親会社は、最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として、最終親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし、自己資本の充実の状況が適当であるかどうかの基準その他の経営の健全性の状況を表示する基準を定めることとされている(金商法五十七条の十七第1項)。これは、要するにバーゼル合意に基づく自己資本比率規制の適用を求めているということである。ここでは、最終指定親会社、その子法人等も含めたグループ全体の連結ベースであるという点がポイントである。
※証券会社単体でも自己資本規制がかかっている(固定化されていない自己資本の額 ÷リスク相当額が120%以上。金商法第四十六条の六第 2 項)。しかしこれは、バーゼル合意に基づく自己資本比率とは計算方法が異なる。証券単体の自己資本規制比率については以下の日本取引所グループのページを参照。
(参考):
金融庁(2010)「金融商品取引法等の一部を改正する法律案に係る説明資料」