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ソーシャルレンディングにおける業登録について

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ソーシャルレンディング業界における行政処分の事例が相次いでいる。2021年5月には融資先の実態を正しく把握していなかったとして、「SBIソーシャルレンディング」に対し金融庁が業務停止命令を出すこととなった。

 

金融庁は、ソーシャルレンディングに関し投資家に注意喚起を行っており、正しく業登録を行っているかどうかを十分に確認するよう呼び掛けている(上記のSBIソーシャルレンディングについては、正しく業登録は行われている)。

 

本ページでは、ソーシャルレンディング事業者がビジネスを行う上で必要な業登録についてまとめたい。

 

ソーシャルレンディングとは

ソーシャルレンディングとは、「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれる。複数の投資家からファンドへの出資を募り、ファンドを通じて企業等に対して貸付けを行う仕組みである。

 

ファンドは信用リスクをとって事業者に貸付を行うことで、高い利回りを期待することができる。その代わり元本保証がないので、一般に「ミドルリスク・ミドルリターン」という言い方がされることもある。

 

 必要な業登録

ソーシャルレンディング業者が行う業務は、①ファンドを組成し投資家から出資を募ること(募集)②集めた資金を元手に資金需要者に貸付けること、の2つに大別される。

 

①については、金商法上の第二種金融商品取引業に登録する必要がある。第二種金融商品取引業は、ファンドの募集を行う際に必要な業登録である。また、②について、貸金業の登録が必要である。

 

ここからはやや細かい話になるが、①と②を別々の主体が行う場合は、それぞれに対応する業登録を行うのみでよい。その場合、①の業務はファンドの組成者自らが出資を募る「募集」ではなく、別の主体が組成したファンドの資金を募る「募集の取扱い」として整理される。

 

また、②に関して、出資された金銭をもって同一の会社等の集団に属する他の会社等に対して貸し付ける場合貸金業法第2条第1項第5号、貸金業法施行令第1条の2第6号イ)等、一定の場合には貸金業登録が必要ないとされており、②の業務を行っていても貸金業者ではないケースもある。

 

投資家の貸金業の登録は不要か

ソーシャルレンディングにおいては、一定の要件を満たした場合、資金の出し手である投資家が貸金業者に該当すると判断されてしまう場合がある。貸金業に登録するには、純資産が5000万円以上で、貸付業務経験者や貸金業取扱主任者を確保し、貸金業法に定める行為規制を遵守する必要があるが、一般の投資家がいちいち業登録などできるはずもない。金融庁では、以下のようなスキームをとれば投資家がファンドに出資する行為を貸金業とみなされないとの見解を出している。

 

・借り手(貸付先)の「匿名化・複数化」

・借り手が法人である

・ファンドは商法上の匿名組合契約によるものとする

 

ポイントは、もし投資家が具体的に特定された投資先について融資を行えば、たとえファンドという「器」があったとしても、ただ資金が通過するだけの存在となり、貸金業と何ら変わらないのでは、という点である。そこで、貸付先を具体的に特定せず、さらに貸付先を分散させることで、この懸念を回避することができる。また、「匿名組合契約」によってファンドを組成することで、ファンドの運用者が事業を行い、資金の出し手(投資家)には決定権がないものとすることができる。

 

しかしながら、上記の「匿名化」には難しい面もある。投資家保護の観点からは、投資家に対して投資先に関する十分な情報開示が必要だという側面もあり、「匿名化」と相反する。そこで金融庁は2019年、投資者と借り手が接触を禁止する措置が図られている場合には、借り手の情報を開示しても、投資者の貸金業登録は不要とする解釈を示した。

 

(参考)

・森・濱田松本法律事務所 増島雅和, 堀天子, 石川貴教, 白根央, 飯島隆博(2017)FinTechの法律 2017-2018』、日経FinTech選書

金融庁HP『ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください

・金融法委員会(2019)『貸付型クラウドファンディングにおける貸金業法の適用について