<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

金融におけるテイラー展開―非線形な価格の動きを捉える―



テイラー展開の概要

テイラー展開とは、ある関数を2次式以上の多項式で近似することである。

 

微分は、ある関数を1次関数で近似すること(線形近似)であった。y=f(x)のx=aにおける線形近似は、x=a、y=f(a)を通り、傾きf'(a)の直線ということになる。いわゆる"微分"として計算するとき、計算された微分係数は、n次式の関数の場合はn−1次式で表され、そこにx座標(ここではa)を与えてあげれば、具体的な数値として算出される。

 

テイラー展開は、x=aまわりにおける2次以上の多項式を用いた近似を行うことで、その精度を高めることを目指したものと言うことができる。テイラー展開によるx=aまわりの2次近似の式は以下のように表せる。

コンベクシティ

金融分野におけるテイラー展開の使用例として、例えば債券のコンベクシティがある。債券運用において、現在の利回り(例えばr)からわずかに上昇したときに債券価格がどの程度反応するかは非常に重要な指標であり、これをデュレーションという。デュレーションは、いわば価格関数の線形近似であり、接線の傾きをイメージすれば良い。

 

利回りの変化が大きくないうちは、線形近似で問題ないが、利回りの変化幅が大きくなると、実際の価格変化とズレが生じてしまう。よって、テイラー展開を行い、利子率rの周りの価格関数の2次近似を行うことで利回りの変化に対する感応度をより精緻に近似することが可能となる。コンベクシティは2次の項の係数にあたる。

 

オプションの非線形リスク

ある金融商品の価格を変動させる要因をリスクファクターという。リスクファクターの変化に対して、商品価格が非線形に動くとき、これを非線形リスク(ガンマリスク)という。反対に、線形のリスクをデルタリスクという。

 

非線形リスクが存在するとき、価格関数をテイラー展開したときに、2次以降の項の値が無視できない規模になっていることを意味する。オプション商品が非線形リスクを持つ典型例である。具体的にオプション価格(プレミアム)がどのように動くかは、例えば以下のページを参照。理論的には、ブラックショールズ方程式によってオプション価格を算出することができる。

 オプション取引について | 日本取引所グループ

 

(参考):

小田信之(1996)「非線形なフィナンシャル・リスクの定量化について」日本銀行金融研究所

服部孝洋(2020)「コンベクシティ入門―日本国債における価格と金利非線形性―」財務総合政策研究所

尾山大輔、安田洋佑(2013)「[改訂版]経済学で出る数学高校数学からきちんと攻める」日本評論社