TLAC適格負債の要件、TLACの所要水準について
本ページでは、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)に課されるTLACについて、TLAC適格負債の要件、そしてTLAC所要水準についてまとめたい。
TLACとはそもそも何か、については、以下のページを参照されたい。
TLAC適格負債の要件
TLAC適格負債の要件として、主に以下が定められている。
・破綻処理対象会社(破綻処理エンティティ)が発行し、維持していること
・グループの内部から調達していないこと
・預金等(除外債務という)よりも返済の優先順位が劣後していること(劣後要件)
・無担保であること
・満期までの期間が1年以上であること
劣後要件について、何をもってその債券が劣後性を持つとみなすのか。これには、3通りの方法がある。
①法定劣後型:各国の法令に基づき劣後させる方法
②契約劣後型:契約によって劣後させる方法
③構造劣後型:除外債務のない持株会社等の破綻処理エンティティが発行することによる方法
③の構造劣後は少し紛らわしいかもしれない。持株会社(例えばみずほであればみずほ銀行ではなくみずほフィナンシャルグループである)は、多くの場合自ら事業を営む訳ではなく、子会社の株式保有が資産の大半を占めている。そのため、持株会社が外部から資金調達するにあたって発生した負債の返済は、子会社からの収入に依存している。持株会社の発行する債券と、実際にキャッシュフローを生み出す子会社の債券を比較すると、前者が構造的に劣後することが考えられる。
日本のTLAC規制対象金融機関はすべて金融持株会社をもっており(○○フィナンシャルグループ)、この③を劣後要件として適用できる。
TLAC所要水準
バーゼルⅢの定める自己資本比率規制におけるリスク性の資産(リスクアセット)比で、2019年までに16%、2022年までに18%、自己資本あるいはTLAC適格負債を確保することを定めている。
ところで、リスクアセットについて、それぞれの資産のリスクの大きさに応じてウエイトがかかり、同じ資産額であってもリスクの高い資産の方がより多くリスクアセットに反映される。一方、バーゼルⅢが定めるレバレッジ比率におけるエクスポージャーという概念もあり、これはリスクウェイトをかけずに、バランスシート上の総資産の額等を単純に足し合わせたものである。
TLAC所要水準では、このレバレッジ比率におけるエクスポージャーも基準に所要水準を設けており、2019年 までに6%、2022年 6.75%がその水準となっている。
詳細については、以下のような文献を参考にされたい。
(参考)
金融庁(2016)『国際金融規制改革の最近の動向について』
小立 敬(2019)『日本のTLAC規制およびTLAC保有規制の概要-大手金融機関の秩序ある破綻処理を支える枠組み-』、野村資本市場クォータリー2019 Spring
みずほ総合研究所(2015)『G-SIBs向けTLAC規制の最終基準邦銀への影響は限定的と想定』