このページでは、証券化商品におけるトランシェとは何かについてまとめたい。
証券化は、一言でいえば「ある資産にたくさんの投資家が小口で投資できる仕組み」ということになる。詳しくは以下のページを参照されたい。
ここでは、複数のローンを束ねた証券化商品であるCLOを例にとって考えてみる。ローンによる元利金はCLOを購入した複数の投資家に分配される。一方で、デフォルトが生じたときにその損失を投資家が被る可能性もある。
このとき、全ての投資家に一律で同じリターン・リスクを引き受けさせるのではなく、相対的にリスクが高くなる部分と、相対的にリスクが低くなる部分に分けて投資家に販売する方式がとられる。これがトランシェの基本的な考え方となる。
リスクが低い部分をシニア、リスクが中程度の部分をメザニン、リスクが高い部分をエクイティという。
リスクが低いシニアトランシェにおいては、投資家は、ローンによる元利金を優先的に受け取ることができる。また、一定額までは損失が発生したとしてもその損失を負担する必要がない。このように聞くとシニアトランシェは良いことずくめに聞こえるが、その代わりリスクがより高いトランシェに比べて分配を受ける額は小さくなる。
リスクが高いエクイティトランシェにおいては、投資家は、シニア・メザニンへの支払いが終わった後にようやく元利金を受け取ることができる。さらに、損失が発生した際には、まず優先的にその損失を負担する必要がある(エクイティトランシェにおける負担でも損失を全額カバーできない場合、残った分はメザニン・シニアへと回される)。その代わり、元利金をメザニン・シニアトランシェの投資家よりも多く受け取ることができる。
このように、支払いや損失負担に順序をつける構造を優先劣後構造という。投資家は、自身のリスク選好に応じて、トランシェを選択することになる。
(参考):
RBC Blue Bay Asset Management(2022)「CLOとは:なぜ今注目すべきか?」