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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

最良執行方針とは何か、またその現状について

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本ページでは、金商法における最良執行方針に関する規定についてまとめたい。

 

最良執行方針とは

証券会社は、顧客からの有価証券の売買注文を受けて、市場で売買を実行する。有価証券の市場価格は刻一刻と変わり、いかに顧客にとって有利な条件で取引を実行できるかが、証券会社のトレーダーの腕の見せ所となる。

 

証券会社が顧客の注文を取り次いで執行を行う際、投資家保護の観点から、顧客の注文について最良の条件で執行するための方針(最良執行方針)を定め、これに従って注文を執行しなければならないことが、金融商品取引法第40条の2第1項に規定されている。各社の最良執行方針は、各社Webページに公表されている。

 

背景

日本では、多様化する投資家のニーズを踏まえて、必ず取引所を通して注文をしなければならないという取引所集中義務が1998年に撤廃された。さらに2005年には、顧客が指定しない限り証券会社は取引所において執行しなければならないという原則も撤廃された。

 

このように、証券会社にとっては取引の幅が増加した。そこで、上記の「最良執行方針」を定めることが求められ、各社が決めた方針に従って、顧客にとって最善の方法で注文を執行することが義務付けられるようになった。何を持って「最良」とするがだが、価格やコスト、スピード、執行可能性(流動性)などの要素を総合的に勘案して決定されることとされた。

 

その後

その後、各社が最良執行方針を策定したわけだが、多くの場合、原則として主たる取引所にて取引を行う旨が記載されている。よって、上記のように取引所以外での取引が可能になるよう法整備が進んだのにもかかわらず、実際には取引所での取引がメインとなっている現状がある。

 

しかしながら、近年、PTSやダークプールなど取引所以外での取引機会が増加している。さらに、取引所や PTS、ダークプールの中から最も条件の良い条件を検索し注文を執行するSOR も台頭している※。

 

こうした中、最良執行の在り方に関して見直しを求める声が上がっている。

 

金融庁では2021年、この点に関し、より価格を重視し取引所外の取引についてもルールを明確化する形で最良執行方針を見直す方針を掲げている。

 

※PTSやダークプール、SORについては、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

(出典)

金融庁(2021)「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ 最良執行のあり方等に関するタスクフォース報告書(案)