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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

市場リスクにおけるVaRの計測方法について

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本ページでは、市場リスクにおけるVaRの計測方法についてまとめたい。

 

VaRとは、一言でいえば、将来起こり得る最大損失額の推計値のことである。

 

VaRについての基本的な説明は、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

 

①分散共分散法

リスクファクター(株価、金利、為替など)が正規分布に従うと仮定し、過去のデータを用いてVaRを算出する方法である。

 

ある確率変数X(例えば株価の変化率)が平均0、標準偏差σの正規分布に従うとき、Xの値の範囲と確率との間に以下のような関係があることが知られている。

X ≦ σとなる確率: 84.1%

X ≦ 2σとなる確率: 97.7%

X ≦ 2.33σとなる確率: 99.0%

X ≦ 3σとなる確率: 99.9%

 

つまり、変化率Xは99.0%の確率で±2.33σの範囲に収まるということであり、-2.33σが最も大きな損失である確率は99%ということである。さらに言い換えれば、確率99%の範囲で考えられる最大損失率は-2.33σである。

 

VaRは、将来起こり得る最大損失額の推計値のことであった。よって、信頼区間99%の下でのVaRは、資産保有額に-2.33σをかければ求めることができる。

 

具体例として、1億ドルを1ドル=100円で購入する場合を考える。 1億ドルを円に換算すると100億円になる。

 

過去のデータから推計した、保有期間1年とした時のドル円の為替レートのσが10%だったとする。このとき、「保有期間1年、信頼区間99%のVaR値」は、100億円 × 10% × 2.33 = 23.3億円、と求めることができる。

 

上では、リスクファクターが一つのみの例を取りあげた。しかしながら、実際には金利や為替など、複数のリスクファクターが存在する。こういった場合、各リスクファクターにおけるVaR値に加え、それぞれのVaR間の相関行列を考慮する必要がある。詳しくは、文末の参考文献などを参照されたい。

 

モンテカルロシミュレーション

モンテカルロシミュレーションとは、乱数を用いて確率的な事象の予想値を算出する手法である。

 

過去の観測データの特性から、リスクファクターがある確率分布に従うことを想定し、その分布に従うような乱数を繰り返し生成することにより、リスクファクターの予想値を形成する。①の分散共分散法ではリスクファクターが正規分布であることを仮定したが、モンテカルロシミュレーション法では正規分布以外の確率分布を想定することができる。

 

これにより、将来の資産価格の予想変動に関する分布をシミュレートでき、VaRが求まる。

 

ヒストリカル

ヒストリカル法は、過去の観測データにおける分布をそのまま使用して、VaRを求める方法である。特定の分布を想定する必要がないという利点がある一方で、あくまで過去のデータでしかないため、未来においてもそのまま当てはまることができるかどうか確証はないという欠点がある。

 

(参考):

日本銀行金融機構局金融高度化センター(2015)「VaRの計測と検証」