安定調達比率とは何か
本ページでは、バーゼル規制における安定調達比率とは何かについてまとめたい。
流動性リスクの顕在化により、銀行の健全性が損なわれると、金融システム全体、ひいては実体経済にまで影響を及ぼしかねない。そこで、バーゼルⅢでは、流動性確保のために、流動性カバレッジ比率や安定調達比率といった規制を金融機関に求めている。今回は、後者について概説する。
流動性リスクについては、以下のページを参照されたい。
安定調達比率とは
流動性リスクの顕在化を防ぐための中長期的な流動性に関する規制が安定調達比率である。もう一つの流動性規制である流動性カバレッジ比率が、ストレス時の短期的な資金流出に対する規制であるのと対照的である。
銀行は、預金や市場から調達した資金を、貸出や資産への投資を行うことで運用する。そして運用した資産は最終的には回収し、負債を返済したうえで、利益を確定させる。簡単に言えば、調達→運用→回収→返済、という一連の流れである。現在運用している、直ちに売却・換金することが困難な流動性の低い資産の額に応じて、流動性が高く中長期で安定的に調達することのできる額を確保するよう求めたものが、安定調達比率である。
具体的には、安定調達比率は以下のようになる。
以下、分子と分母をそれぞれ見ていきたい。
利用可能な安定調達額(分子)
利用可能な安定調達額とは、簡単に言えば、中長期で安定的に調達することのできる(流動性の高い)資産の額である。具体的には、自己資本や長期負債のほか、リテール預金などが含まれる。預金が含まれるのは、預金者がすべてお金を引き出すという可能性は考えにくいため、安定的な調達源とみなすことができるためである。
つまり、バランスシート上、負債、自己資本に計上されるものが対象となる。
所要安定調達額(分母)
所要安定調達額は、資産に対して安定的に資金調達が必要な額を示している。すなわち、直ちに売却・換金することが困難な(流動性の低い)資産の分だけ、安定的に調達ができている必要がある、ということを示したものといえる(「所要」安定調達額、とはそういうことである)。長期の貸出や、非上場株などが含まれる。
(参考)